こんにちは!友安製作所、新米広報のCyan(シアン)です。
今日は、連載「気になる八尾のあの工場」の vol.3をお届けします。
友安製作所が拠点とする大阪府八尾市の、ものづくり企業の魅力を発信していくこの連載。今回は、創業明治16年、八尾市に工場を構える専業ごまメーカーの和田萬さんへお邪魔しました!
当社が毎年秋に開催するお祭り「トモフェス」では、和田萬さんの「ごま油搾り」のワークショップが大人気!昨年は友安製作所Cafe & Bar 阿倍野とコラボした、トモフェス限定の「ごまバーガー」も絶品でした。
ごまの生産、加工、販売までの全てに携わり、直営のショップやカフェでごまの魅力を伝えている和田萬さん。ごまという食材にフォーカスして、その美味しさと、あらゆる可能性を日々追求されています。
今回は5代目社長の和田武大さんにお話を伺うことができました!
新しい時代に「ごま」を
140年の歴史をもつ和田萬さんは、もともと乾物問屋としてスタートしたそうです。創業時から変わらず、大阪・天満の地で食に関する商いを続けています。
創業者の名は、和田萬次郎。社名の由来であることは一目瞭然ですね。食のまち天満の乾物屋が集まる地域で、のりや椎茸、粉や豆などの仕入れと卸売を行う中、ごまという商材に目をつけたのは3代目だったそうです。時は終戦直後の1950年ごろ。世の中が大きく変わっていく中で、自社の商売を見つめ直し、メーカーになることを考えたといいます。
天満といえば、水都大阪の中心地域にあたります。和田萬さんでは、店の前に流れる川でごまを洗い、天日干しをして「洗いごま」をつくるようになったそうです。自分たちで手を加えることで、食材の価値を高められることが、ごまの加工を選んだひとつの理由だったといいます。
また、戦争を終え、人々が暮らしに健やかさを取り戻していく中で、「身体にいいものを届けたい」という思いもあったそうです。古くから日本食に馴染みがあるごまは、ハイカロリーで滋養のある食べ物として、今後もっと選ばれていくと考えてのことでした。
実はごまを加工するという産業は戦前にはなく、ごまを干したり、煎ったりすることは、各家庭で行われていました。戦後、これからの家庭料理のあり方を想定し、ごまに更なる可能性を見出したようです。
とはいえ当時は、インスタントラーメンや、粉類など、様々な商品を取り扱っていたといいます。ごまメーカーに特化していったのは、1970年代。こだわりの焙煎を追求することで、独自の味わいや香りを引き出し、「ごまでできること」を考えていったそうです。
「いいものを、好きなひとへ」
友安製作所の取材チームには、3世代にわたって和田萬さんのごまを食べてきたという、生粋の和田萬ファンも!取材に向かう車内で「和田萬さんの味を知ったら、もう他のごまに戻られへんで」と聞いていました。そんな特別な美味しさの秘密を和田社長に伺ってみると、一番のこだわりは焙煎にあるといいます。
ごまの味を左右するという焙煎。和田萬さんでは、多くの手間と時間をかけて、他のメーカーでは出せない味わいを引き出しているそうです。ひとつひとつの工程で最善を尽くすため、一度にたくさんの量を生産することは難しく、価格も高くなります。
量販店での販売には向きませんが、その分ファンをつくり、質の良いものを本当に好きでいてくれる人に届けたいのだといいます。まさに、世代を超えて永く愛されるごまのあり方を目指しているのです。
もう少しそのこだわりを深掘りしてみると、まずは「少量でつくる」こと。ムラを出さず、均一な味わいにするために大切なことだそうです。
もうひとつは「”材料に合わせて”という前提を持つ」こと。「ごまってこんなもん」を覆すべく、その時の素材に合わせて焙煎時間と温度を調節し、仕上がりをみて再度調整を繰り返すことで、味を安定させていくのだといいます。
その判断を下すのが職人の仕事。目には見えない素材の違いを知るためには、五感を駆使する必要があります。その日の気温や湿度を考慮することはもちろん、焙煎中は何度も味見を重ね、1秒単位、1度単位で焙煎機を調節しているそうです。和田萬さんのごま職人になるには10年でも足りないくらいだといいます。
「ごま」の全てを知りたくなって
乾物の卸問屋から、ごまの専業メーカーへと変化していった和田萬さんですが、今ではごまの栽培や販売も含め、ごま文化の全ての側面に携わっています。
実は日本では、ごまという作物の生産がほとんど行なわれておらず、ごま加工の原料の99.9%は輸入となっています。ごまは暑い地域で生まれた植物であるため、その主な産地は、アフリカや東南アジア、南アメリカなど。ごまは強い植物で無農薬でも育てやすいそうですが、機械の導入が難しく、手作業で栽培されているために大量生産は簡単ではありません。その結果、人件費が安い国に生産が集中し続けているそうです。
そんな中、和田萬さんは2001年から0.01%を担う国内のごま農家を守り、日本のごまづくりを継承するために、200軒の契約農家さんと共に無農薬・化学肥料不使用の国産ごまを栽培するプロジェクトをはじめました。また、2009年からは自社でのごま栽培にもチャレンジし、プロジェクトの賛同者となったお客様と一緒にごまを植え、出来上がったごまを食べるという体験を共有しています。
また、2012年からは土蔵を改装した直営店舗を、2023年にはカフェの運営を開始し、お客様に美味しいごまを提供する役割も担っています。
そんな風に「生産」「加工」「販売」の3つの過程に関わろうとしたのは、ごまへの愛情を追求するためだったといいます。
栽培の難しさを知って、加工に向き合う。さらにその苦労や、その分の美味しさを知って、販売を行う。全てを知った上で、お客様に直接手渡すことで、ごまの魅力をより伝えていけると考えたそうです。
ごまを使ったオリジナルの商品開発にも取り組み、現在その数は100種類以上。ごまの美味しさを軸につくっているという調味料やふりかけは、安心していただくことができます。
また自社サイトではごまを使ったレシピを紹介するなど、あくまで主役にはならないごまという調味料の活用法を発信しています。「ごまのことならなんでもわかる」そんな説明係を目指しているそうです。
「ごま」を伝え、永くつながる
最近では、ごまの味わいに感銘を受けた海外の有名レストランのシェフが、工場の視察に訪れることも多いという和田萬さんに、今後の展望について伺ってみました。
和田萬さんがこれから力を入れていきたいというのが「ファンづくり」。
もっと自分たちの商品をみてもらい、その魅力を伝えていきたいと意気込んでおられます。愛着をもって、永く使ってもらえるよう、ブランディングに磨きをかけていきたいそうです。
今年4月にオープンしたカフェも、そんな取り組みのひとつです。「IRUAERU」という和田萬さんの新たな拠点は、「ごま」と「ひと」、あるいは「つくるひと」と「食べるひと」が出会うことで、美味しいや楽しいが生まれる場所になっています。
現在カフェでは、曜日替わりのシェアキッチン*で提供されるランチと、和田萬さんのオリジナルスイーツをいただくことができます。(シェアキッチン*=複数の飲食店がひとつの店舗をシェアし、交代しながら営業を行う)
私も実際にお邪魔してみました!いただいたのは、「黒ごまペーストアイス」
濃厚な黒ごまのソースがたっぷりとかかったバニラアイスは、ひと口食べるとごまの旨味と自然な甘みが口中に広がります!上にかかっているのは、金のいりごま。プチっと弾ける香ばしさが、とても印象的でした。アイスのイメージも、ごまのイメージも覆してしまう、そんな高級感あふれる味わいを楽しめます。
人気の「ごまラテ」や「ごまあんもなか」も、念願のカフェ営業に向けて開発された自慢の一品だそうです。「和田萬のごまだからこそ成し得る美味しさ」と、和田社長が自負するごまスイーツを皆さんもぜひご賞味ください!
職人の居るまち、八尾へ
今回も「八尾のかっこよさを伝えたいんです!」と工場におしかけた私たち。大阪の中心地に生まれ育ち、伝統ある家業を引き継いだ和田社長にも、現在2つの工場を置いている八尾のまちへの想いを伺いました。
第一声に、「僕の好きなタイプの日本人が居るんですよ」と和田社長。それは、例えば和田社長のお父様(4代目社長、現会長)のように、長年ものづくりに没頭してきた職人たちのことだといいます。
自分で考え、自分の商品をつくってきた職人には、その満足感と年月による特別なオーラがある。そして、そんな職人が多くいる八尾のまちでは、それがまちそのものの雰囲気になっていると感じているそうです。
ものすごい技術を持って、地味なものづくりに向き合い続ける彼らは、芸術家ではなく、職人です。決して派手ではないものの、その想いや技を言葉にして受け継ぐことが大切だと思うと、和田社長は話してくれました。
おわりに
今回、和田萬さんにお邪魔するまで、私はごまがどんな姿で畑に育つのかを想像したこともありませんでした。それくらい、袋に詰められてスーパーに並んでいるごまを、何も考えずに手にとっていたのです。
そして「ごまを入れると美味しくなる」となんとなくで使っていましたが、和田萬さんのごまを試食して、本当のごまの味わいが私にもわかったような気がします。
最後に、特別に入らせていただいたごまの焙煎工場の様子をご紹介します!
こちらは、鉄板でごまに熱を加える焙煎機。「回転式フライパン」のようなイメージです。この他にも、温風で焙煎するタイプの機械もありました!ごまの種類やつくる商品によって使用する焙煎機が違うそうです。
異なる焙煎機で煎られたごまを、それぞれ味見させていただきました。煎りたて熱々のごまには、今まで食べたことないような香ばしさが!2つを食べ比べると、確かに焙煎の方法によって、風味に違いが出ることがわかりました。
こちらは、搾りたてのごま油の様子。抽出したごま油は、ゆっくりと時間をかけて紙でこされています。一般的に「ごま油」として販売されているものには、ごまの種類が明記されていないことが多いですが、和田萬さんでは「金ごま油」「白ごま油」「黒ごま油」と、それぞれの旨味を100%生かしたごま油をつくっているそうです。
ポタポタと落ちていくごま油の様子を見ていると、一滴一滴が透き通っていることがわかりますが、実際に試食させてもらうと想像を超えるフレッシュさに驚きました!
工場を一周すると、一つひとつの工程に本当に手間暇がかけられていることがよくわかりました。小さなごまつぶから丁寧に美味しさを引き出す現場を目の当たりにすると、和田萬さんのごまが特別であることにも納得できます。
職人が生み出す、健康的で味わい深いごまという食べ物。その魅力に釘付けになる工場見学でした。これを読んだみなさんも、ぜひ八尾で煎られた美味しいごまをお試しください!
和田社長、今回はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
株式会社 和田萬
明治16年創業の専業ごまメーカー。現在は「生産」「加工」「販売」と、ごま文化の全てに関わる事業を展開されています。【和田萬さんHP】https://www.wadaman.com/