【対談】（後編）by TOMOYASU S.S.への想い｜価値ある製品を届けるためにかけられている手間暇とブランドの未来

友安製作所が企画・デザイン・製造すべてを自社で手がけるオリジナルブランド「by TOMOYASU S.S.」。2025年9月10日のブランドリニューアル以降、商品展開の幅はますます広がりを見せています。

この記事では、リニューアルの背景やブランド名に込められた想い、そしてby TOMOYASU S.S.がどのような価値を届けていくのか──。リニューアルプロジェクトに携わった企画課・Vivi、製造課・Punch、Peter、ブランドコミュニケーション課・Cuminの4名が、異なる立場から新ブランドについてを対談式で語ります。

前編「by TOMOYASU S.S.誕生秘話｜ブランド名に込めた新たな想いとは？」では、by TOMOYASU S.S.のブランドリニューアルの背景や新しく決めたコンセプト、想いの伝え方などについてを詳しく紹介しました。後編では、ブランドの価値を支える手間暇や、リニューアルを経たブランドの未来の展望に焦点を当てながら、ものづくりがどのように価値として積み上がっていくのかを紐解いていきます。

企画課のViviです！「こんなのがあったらいいな」をカタチにするべく、by TOMOYASU S.S.の新商品開発を、製造メンバーと協力して試作・改良を繰り返しています。私の推しはby TOMOYASU S.S.の魅力がギュッと詰まったアイアンハンガーバーten・kiです！

デザインや製造を担当しているPunchです！企画担当と連携しながら、by TOMOYASU S.S.の立体的なデザインや手触り、質感など製造技術で実現できるデザインなどを設計しています。自分が施した構造デザインが製造によって上手く形にできた時が一番のやりがいです！

製造課のPeterです！僕ら職人の技術が何よりby TOMOYASU S.S.に求められる価値だと思っているので、ひとつひとつ丁寧にものづくりをしています。デザインから製造まで、製作において1から関われることが、僕が思うby TOMOYASU S.S.の魅力です。

ブランドコミュニケーション課のCuminです！広報や会社のブランディング活動などを担当しています。by TOMOYASU S.S.の中の推しはクリア塗装の商品やテーブルの脚…ひとつに絞れません（笑）

ものづくりの肝となるのは試作と雑談？密な社内コミュニケーションが商品誕生のカギ

──by TOMOYASU S.S.では現在、家具だけでなく、サインボードやハンガーバーなどさまざまな製品が展開されていますが、製造過程において大切にしていることはなんですか？

Peter：試作は重ねていますね。僕自身が自信作だと思えたものでも、企画さんから「可愛くない！」と言われることはやっぱりある（笑）。だからこそ、試作前になるべく企画側の意図や緻密な考えを汲み取ってから、理想の形に近づけるよう努めています。

Punch：仕事内容に直接関係あるかどうかに関わらず、とにかく普段からコミュニケーションを積極的に取ることが、実は一番大切だと思います。僕は特にBoss（代表取締役社長）や企画チームとよく話すんですが、彼らがどんなことに興味を持っているかなど、インテリアや家具に限らず価値観がわかるような話を引き出すんです。会話を重ねていると、相手の考えを自然と汲み取るようになるため、ものづくりにおいても要望を形に落とし込みやすい。ほかの人ともコミュニケーションを普段から取っていると、自然と製品づくりの方向性が見えてきます。

Peter：普段から話しやすい関係だと、意見交換もしやすくなりますよね。ものづくりにおいては、基本的に誰かが一人で考え込んだり、決定権を持ち過ぎたりすることは良くないですから。

Vivi：確かに、代表と一社員の距離感ではないくらい、Bossともよく話します。社内コミュニケーションが活発だと、いざ製品づくりのやり取りをする際にも、言語化しづらいようなちょっとした要望も、製造さんはすぐに察して対応くださる印象です。

──私もまだ入社して間もないですが、社内コミュニケーションが活発だと感じます。会社としては、商品企画やデザイン、製造、ブランディングまで一貫して内製化している点も印象的でした。

Cumin：会社の内情にはなりますが、製作から販売まですべて内製化しているからこそ、しっかりした社内コミュニケーションが必要不可欠なんです。縦の繋がりを優先すると、試作にかかる時間やコストが大きくなりがちですが、内製化の場合、普段から雑談も含めてしっかりやり取りしているとちょっとした融通が利く場面も多い。横の繋がりが非常に濃い会社だと感じます。

Vivi：そうですね。私は商品企画を立てる際、イメージするビジュアルや人気のある素材、インテリアアイテムなどの情報を製造側に共有します。すると製造さんは、素材の特性など、一歩踏み込んだ情報を教えてくれるんです。そうすると、当初のアイデアや企画がよりブラッシュアップされて…！商品企画から製造、販売までの流れがすべて社内で完結できるからこそ、by TOMOYASU S.S.は、私たちらしい世界観をつくることができるのだと思います。

Peter：試作途中で何かあったときに、製造チームだけでなく企画担当にもすぐ状況を共有して、製造方法を変える判断ができるのも内製化の強み。製作において何かと模索できる時間を大切にされているから、by TOMOYASU S.S.は機能美を追求でき、型にはまらない自由な発想であそび心のあるインテリアづくりができるんです。結論、試作と雑談がとても大事です（笑）

──雑談ベースの話から生まれたアイデアが製品づくりに繋がると、関わった人全員がコミュニケーションを重ねてできた商品になるので自信作になりますよね。製作では、具体的にどんな手間暇がかけられているのでしょうか？

Peter：仕上げを綺麗にすることに一番手間暇がかかっていますね。鉄は「すべて均一で同じ形」と思われがちですが、実は仕入れの段階から個体差があります。さらに鉄は繊細なので、溶接加工や切断を行うと、組み立ての際に上手く噛み合わなかったり、歪みが生じてしまったりするんですよ。そのままではお客様に自信を持ってお渡しできません。そのためby TOMOYASU S.S.では、なるべく商品によって大きな差が出ないよう、綺麗に整えていく“仕上げの作業”に力を入れています。

Punch：例えば、溶接加工による熱の影響で曲がってしまった鉄を元に戻すために、炙ったり叩いたりする作業があります。また、仕上げで必ず行われるのは“削る作業”。削り跡が残らないよう表面を平らに削り、作業の痕跡を残さないことで商品の質が高まります。見えなくて良い部分を見せないようにすることで、より商品が美しいものになるんですよね。そのため、細部まで磨きをかけることに手を抜かず、努力を重ねています。ただ、by TOMOYASU S.S.は複雑に組み合わせて溶接されたものなど、あらゆる手細工が施された製品が多いので、自然に仕上げていくことは正直難易度が高いんです…！扱いには感覚的なコツも必要で、長年の経験から得た技術力がないと難しい作業です。

Vivi：何度もお伝えしていますが、by TOMOYASU S.S.を含め、友安製作所でつくられる製品はこうして1点1点が手作業でつくられています。そのため、ひとつの製品を大量生産するのではなく、絶妙なアレンジを加えながら種類豊富に展開しています。簡単ではない挑戦ですが、日々製品づくりの研究を重ねてさらなる技術力の向上を目指しています。

Cumin：これだけの手間暇がかけられているので、by TOMOYASU S.S.の商品は決して手に取りやすい価格帯のものばかりではありません。それでも、“価格以上の価値がある”と自信を持って言えるからこそ、ブランドを愛してくださるお客様が多くいらっしゃるのだと思います。お客様には、いつも感謝の気持ちでいっぱいですね。

by TOMOYASU S.S.はこれからどうなる？ブランドが目指すべき未来

──最後に、リニューアルを経たby TOMOYASU S.S.が今後どのような姿を目指すのか、教えてください。

Vivi：大きな目標ではありますが、by TOMOYASU S.S.だけで家づくりを完成させられるブランドになりたいと思っています。そのためにも、これからはより大規模なインテリア製作にも挑戦しつつ、商品ラインアップの幅をさらに広げていきたいです。また、“友安製作所の顔”としてブランドの価値を高めたいという思いもあります。友安製作所にはインテリアショップやカフェなど複数の側面がありますが、その中でも「友安製作所といえば“by TOMOYASU S.S.”」と言っていただけるような、会社を代表するブランドになれたらと考えています。

Punch：Viviの言う通り、友安製作所はさまざまなライフスタイルの価値をお客様に届けています。その中で、by TOMOYASU S.S.がひとつのインテリアブランドとして、名だたる家具メーカーと並ぶ存在感を発揮していきたいですね。“友安製作所の顔”として会社を引っ張る存在になれるはずなので。

Cumin：友安製作所の中でも、最も「らしさ」が集約されたブランドがby TOMOYASU S.S.だと思っています。だからこそ、今後はブランディングの柱となる存在にさらに育ってほしいです。また、あそび心があるデザインや、職人による手仕事から生まれる温かみなど、このブランドならではの魅力がたくさんあります。その良さをより多くの人に知っていただけるように、ブランドの認知も広げていきたいですね。

Peter：友安製作所とクリエイティブユニット・TENTがコラボして商品製造を手がけた掃除道具シリーズ「BRUSHUP」が、iFデザインアワード2025の最高賞を受賞しました。次は、by TOMOYASU S.S.でも同じ賞を獲りたいというのが目標です。BRUSHUPは、曲げ加工ではなく、友安製作所が強みである溶接加工と仕上げの技術が評価された製品でした。その技術をby TOMOYASU S.S.でも活かしながら、友安製作所らしさが詰まった製品をこれからもたくさんつくっていきたいと思います。