【気になる八尾のあの工場vol.6】オーツーさん

こんにちは!友安製作所 新米広報のCyan(シアン)です。
今日は連載「気になる八尾のあの工場」の第6弾をお届けします。

友安製作所が拠点とする大阪府八尾市の、ものづくり企業の魅力を発信していくこの連載。
今回は業務用イスの製造・販売を行うオーツーさんにお邪魔しました!

オーツーさんが手がけるのは主に店舗や公共施設、学校などで使われるイス。空間づくりのプロが選んで購入することを前提としているため「業務用」とされますが、実は当社のECサイト「友安家具製作所」では、オーツーさんのオリジナルブランド「QUON」の商品をどなたでもご購入いただくことができます。また当社のファブリックを張地に使用したアイテムも展開しています。

そんな日頃から繋がりの深いオーツーさんだからこそ、「その歴史と、“QUON”ブランドの魅力をもっと知りたい!」という思いで、今回工場を訪ねました。お話をきかせてくださったのは、社長の梶原弘隆さんです。

株式会社 オーツー
創業1962年の業務用家具メーカー。独自のものづくりにより、誰もがくつろげる家具を提供されています。【オーツーさんHP】https://otu.co.jp/

イス一筋で60年

オーツーさんは1962年創業。約60年もの間、変わらずイスづくりに携わっている会社さんです。しかし、もともと手がけていたのはイスの脚部分だけ。創業当初は「梶原鉄工所」という名前で、喫茶店やスナック、パチンコ店などで使う、ラッパ型のイスの脚を製造していました。

創業当時に製造していたラッパ型の椅子の脚

しかし高度成長期真っ只中だった当時、多くの需要がある中でイスメーカーの下請け工場という立場での仕事は厳しいものでした。そこで野心家の創業者は「自分たちで、イスそのものをつくろう!」と新たな挑戦を決意します。そして自らイス張りの技術を習得。日々研究を重ね、独自のものづくりに挑む創業者の熱心な姿勢により、イスの製造と販売がスタートしました。その際、社名を「丸二スチール製作所」に改め、後に現在の社名「オーツー」に至ります。

「QUON」は、2011年創業50周年を期に、自社商品を集約するかたちで立ち上げられたオーツーさんのオリジナルブランド。「10年後のオーツーを想像しよう」と当時の幹部社員らに呼びかけた際、キーワードとなった「QUALITY」「UNIVERSAL」「ONLY ONE」の頭文字をとって名付けられました。「QUON」はオーツーさんのシンボルであり、未来への道標なのです。

「QUON」と歩む社長のはなし

今回お話しを伺った梶原社長は、3代目として2012年から社長を務めており、まさに「QUON」と共に歩んできた存在です。そして「QUON」立ち上げまでの50年間、梶原社長へと会社のバトンを繋いできたのは実のご両親でした。

「梶原鉄工所」をふたりで切り盛りしていた頃、「自分たちでイスを売るなら、取引をやめるぞ!」と得意先に脅されながらも、イスづくりの事業をおこし、守り抜いてきたご両親。実際に既存の取引先を失いながらも、「夫がつくって、妻が売りこむ」という二人三脚で事業は少しずつ大きくなっていきました。

そんな2人の間に長男として生まれた梶原社長は、幼い頃から「後継」と言われて育ちました。しかし「自分は後継なのだ」という強い意識は、次第に少年から将来への期待を奪います。「中学生のとき、何かがプツンときれたように無気力人間になってしまったんです。努力しても自分には同じ未来しかないような気がして」と梶原社長は振り返ります。

さらに17歳のとき、創業者であり会社の絶対的存在だと思っていたお父様が病により他界。病床で「あとは頼んだぞ」と言われても実感が湧かず、会社を引き継ぎ懸命に働くお母様をそばで見ながらも、なんとなく青春時代を過ごし続けます。高校卒業から数年が経ち22歳で家業に入ってからも特段やる気はなく、ぼんやりとスタートをきったのでした。

会社に入り、初めに経験したのは製造現場。当時の工場長から指導を受けてオーツーのものづくりを学びました。そして営業へ出てお客様と向き合うようになった時、梶原社長の心に変化がおきます。デザインを自ら図面におこし、材料を調達、製造メンバーと協力してひとつのかたちに仕上げていく中で、ものづくりに対する責任と熱が芽生えました。そしてお客様の「こんなのほしいねん」に対して「つくったろ!」という情熱を抱くようになり、「そういえば自分は小さい頃からものづくりが好きだった」と気がついたのです。「ものづくりが好きだ」その精神が無気力だった梶原社長に火をつけました。

そして共に会社を支える兄弟たちや、他の社員とも力を合わせ、会社をもっと良くしていこうと奮闘するうちに、「たとえ母がいなくなっても、自分がきちんと会社を引継げるように」と社長就任を決意する日がやってきました。

「ものづくりが好き」。その気持ちでオーツーの仕事に正面から向き合い始めた梶原社長は、「QUON」ブランドを深化させようと動き出します。

「QUON」だからできること

スチールファニチャーを原点とするオーツーさんは、現在も自社工場を構えて家具の製造を続けています。今回お邪魔した八尾の本社はオフィスと工場が一体化しており、デザイン・設計・製造と、ひとつの製品が完成するまでの全てのセクションが集う場所です。

「QUON」のものづくりのスタイルとなっているのが、「とにかくやってみる」という柔軟な姿勢。どんな場所でも安心して使ってもらうための強度と、他社のマネは絶対にしないというオリジナルのデザインを上手く融合させるために、プロトタイプの製造を繰り返します。

溶接で仕上げた脚を一点ずつ磨き、塗装していきます

その柔軟性は、お客様の理想の一脚を形にする糧にもなっています。

「QUON」ブランドとして、唯一無二のアイテムを生み出すオーツーさんですが、お客様それぞれが思い描く空間に寄り添うことも忘れません。オーツーさんのイスが使われる飲食店や商業施設では、それぞれにその空間で表現したい「色」が違います。企業カラーや、空間のイメージを大切にされたいお客様に選んでいただくには、「黒」や「白」といったベーシックなカラーだけでは対応しきれないこともしばしば。

そこでオーツーさんは「スチールカラーオーダーシステム」をwebサイトに設置し、一脚からでも手軽に理想のカラーリングでオーダーすることができる体制を整えています。このような対応ができるのは、一点一点自社で塗装し、丁寧にお客様に届けているからこそ。「とにかくやってみる」という姿勢でお客様それぞれに地道に向き合ってきたことで、「手軽に理想を形づくれる」というオーツーさんならではのシステムを確立し、お客様に寄り添ったイスづくりをされています。

ショールームには様々なイスが並びます

「おもろかっこいい」という個性

「QUON」の歩みの中で大切にしてきたのは、自分たちらしさの追求でもありました。初期のコレクションでは、個性を表現しようとしたことで、奇抜すぎて売れないアイテムも出てきたそうです。しかし「売れなくてもいいから、何か“QUONらしいね”と思ってもらえるものをつくろう」「当たり前のことをしてもおもんない」と考え、社員たちにもそう伝えてきたと梶原社長は語ります。そんなトライの繰り返しで、確立されてきた「QUON」。

その独創性は、イスづくりだけに留まりません。お客様にその技術と個性を示し、伝えるためのカタログにもこだわりが詰まっています。

今期のカタログ

今期のカタログのページをめくってみると、印象的なのは、お洒落なインテリアのセットの中でのびのびと過ごすふたりの人物。垢抜けたオーラを放つふたりが空間を引き立てているようにも、その空間を形づくるオーツーさんのインテリアが、ふたりの豊かな表情と佇まいを引き出しているようにも感じられます。それがオーツーさんが求めた「おもしろさ」です。

「お客様がイスのサイズ感をイメージできるようにと、ただスーツを着た人を座らせるのではおもしろくないじゃないですか」と梶原社長。「それならばファッションとイスの張り地を結びつけよう!」と自ら発案し、スタイリストにイスのカラーや張り地に合わせた衣装をコーディネートしてもらっているそうです。

「当たり前」から少し離れて、独自の「かっこいい」を表現するオーツーさん。カタログ同様にこだわり抜いた世界観を魅せる展示会でも、ユーモアの要素を大切にされています。ある時は、イタリア人デザイナーのかっこいいインタビュー映像の字幕を関西弁にしてみたことも。必ず何か「おもろい」を加えようと、みんなでアイデアを出し合っているそうです。

梶原社長曰く、「“おもろかっこいい”が丁度いい」のだとか。かっこよさに振るとハードルが上がってしまうけれど、おもしろさを同時に求めることで、自分たちもお客様も親しみやすいブランドになると考えているのです。だからこそ目指すのは、背伸びしすぎず「よく見たらオシャレやね」と言ってもらえるような自然体のかっこよさ。「プロが使うものって、なんか渋くてかっこよく見える。そんな立ち位置を目指したいんです」と梶原社長は語ります。

夢は、イタリアにあり

10年後のオーツーを思い描くことで誕生した「QUON」は、2022年で10周年を迎えました。そんな「QUON」が、これから更に磨きをかけようとしているのが、「UNIVERSAL」の「U」の部分。イタリアで開催される世界的なインテリアの展示会「ミラノサローネ」に出展することが、これからの10年間で必ず叶えたい目標なのだそう。

世界中の人に知ってもらい、認めてもらうためにはやはり「品質」と「デザイン性」を高めることが不可欠です。だからこそ「QUON」というブランドそのものを昇華していこうと改革を進めています。

同じく八尾のものづくり企業として、自社のものづくりでイタリアを目指すオーツーさんの未来に私までワクワクしてきました。

屋外用チェアをディスプレイする屋上から、八尾のまちを眺める梶原社長

「たまたま八尾だったけど」

さて今回も、八尾のものづくりの力強さを実感するお話をたくさん伺ったところで、梶原社長にも八尾についての話題を振ってみることに。

オーツーさんの創業地は東大阪ですが、事業の拡大に伴って八尾に工場とオフィスを構えるようになりました。梶原社長の代では、八尾の企業の共創地点「みせるばやお」や、八尾と周辺地域のまちこうばが一体となって開催するオープンファクトリーイベント「FactorISM」の活動に参加されるなど、徐々に八尾のまちとの繋がりを深めています。

数年前までは、たまたま会社が八尾にあるだけで、まちのこと何て全く考えていなかったけれど、「みせるばやお」での八尾のこどもたちとの交流を通して「八尾のひとと向き合っている」と感じるようになったそうです。「今は“少しでも八尾が活発になるなら”と思っている」という梶原社長。「FactorISM」では参加企業が最も多い八尾支部の支部長を務めていらっしゃいます。

「FactorISM」に参加した子供たちが、オーツーさんのオシャレなイスをきっかけにこのまちで生まれるものに興味を持ってくれたら嬉しいです。

イス張り職人さん

おわりに

実は今回の梶原社長への取材は今までにない程、予定していた時間をオーバーしてしまいました。それくらい一つの家族が社員たちと共に紡いできた会社のストーリーに聞き入ってしまったのです。

またひとりの後継が社長になるまでのお話をうかがえたことも、貴重なインタビューになったのではないでしょうか。梶原社長が目指す「おもろかっこいい」というスタイルは、ご自身のお人柄そのものでもあるように感じられ、とても印象的でした。

この連載でも、八尾のものづくりのかっこよさを飾ることなく、そのまま伝えていけたらいいなと考えています。

最後に特別に入らせていただいたオーツーさんのイス工場を写真でご紹介します。

自社製品のイスを中心にコーディネートされた食堂。
オシャレなオフィスと食堂を抜けて下の階へ降りると、そこは工場でした!

上から見た工場の景色。これからイスになっていく様々な鉄が用意されています。

こちらは溶接工さん。友安製作所の溶接工は立って作業をするので、座りスタイルの方もいらっしゃるのだ!と驚きました。じっと座って手元を見つめる様子もかっこいいですね。

溶接した後の磨きと塗装も、全て人の手で。
一脚一脚と丁寧に向き合う職人の背中が印象的でした。

カラーオーダーに対応するために、たくさんの塗料が用意されています。

オーツーさんの原点であるラッパ型のイスの脚。
「へらしぼり」という加工でいまもつくられています。

張り地の裁断と縫製も手作業です。圧巻のミシン捌き!女性スタッフの方もいらっしゃいました。

こちらはイス張りの職人さんたち。こちらもとにかく手作業です。
決して広くはない工場を一周すると各所に職人技がぎっしり。手先に技と想いを込める丁寧なものづくりの現場でした。

工場の上には「QUON」のショールームも併設。この場所で生まれたアイテムたちがずらりと並びます。工場を見学した後に改めてプロダクトに対面すると、「この場所で、あの人たちがつくったのだ」という感動に包まれます。

オシャレで空間にも使う人にも馴染む、オーツーさんのインテリアが持つあたたかみは、人の手によって丁寧につくられたからこそなのではないかと感じる工場見学でした。
「おもろかっこいい×職人仕事」で世界を目指すオーツーさんからこれからも目が離せません!

梶原社長、今回はお話を聞かせてくださりありがとうございました!