数あるインテリアのスタイルの中でも、世界中から注目を集めつづけるひとつが、フレンチスタイル。「伝統とモダンが溶け合ったパリの華やかな暮らし」、あるいは「田舎町の自然体であたたかみのある暮らし」映画や雑誌で見かけたそんなフランスの風景に憧れを抱いたことはありませんか。
この記事では、そんな憧れに近づく一歩として、フレンチスタイルを代表する伝統的なテキスタイル「トワル・ド・ジュイ」にフォーカス。その歴史から、コーディネートのポイントまで、徹底解説します!
目次
マリーアントワネットも愛した「トワル・ド・ジュイ」
フランスを代表する伝統的なデザインのひとつである、「トワル・ド・ジュイ」。18世紀にテキスタイルとして誕生して以来、ファッションやインテリアのシーンで愛され続けています。近年でも有名ファッションブランドのコレクションに採用されたり、100円ショップでグッズが展開されたりと、話題がつきません。
そのため、何となく「こんなデザイン」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実はそのスタイルは多彩であり、当時の貴族文化を物語る奥深いものです。
そもそも「トワル・ド・ジュイ」は、フランス語で「ジュイの布」という意味の言葉。18世紀に、ヴェルサイユ郊外の「ジュイ」という村で隆盛した美しい柄をもつ綿織物を指しています。
「トワル・ド・ジュイ」は、当時貴族たちの間で大流行し、あのマリーアントワネットも、その作り手に会いたいと願うほどの愛好家だったそうです。
創設者亡きあと、不景気により「ジュイ」村での布づくりそのものは衰退しますが、「トワル・ド・ジュイ」は、ウィリアムモリスをはじめとするその後の芸術家たちにインスピレーションを与えるなど、様々な影響を残しました。そして今では、「トワル・ド・ジュイ」を踏襲したデザインのスタイルそのものが、その名で呼ばれるようになっています。
「トワル・ド・ジュイ」の発祥
「トワル・ド・ジュイ」の源流は、インドです。繊維大国として古くから豊かな技術と織物文化を発展させてきたインドは、17世紀ごろからヨーロッパや日本をはじめとする世界各地へ、その美しい布の存在を知らしめました。フランスでは「アンディエンヌ」、日本では「インド更紗」として、同時期にインド発祥の華麗なプリント布が持ち込まれています。
この美しく、丈夫な布は実用性が高く、フランスの貴族たちの間でも人気を博しました。国内の職人たちはすぐに模倣を試みたものの、フランスでは綿が育たないということもあり、技術は思うように発展しませんでした。同時に、「アンディエンヌ」(インド更紗)に魅了された人々の活動は、フランスの伝統的な繊維産業を脅かすものとして、政府はその製造・輸入・着用のいずれもを禁止してしまいました。
しかし、この技術を獲得した近隣諸国からの密輸は後をたたず、どのような処罰を設けても、その流行は全く止めることができませんでした。結果的にこの禁止令は解かれることとなり、73年ぶりにフランスで「アンディエンヌ」(インド更紗)をつくる試みが再開します。
いよいよ公に「アンディエンヌ」(インド更紗)の製造が可能になろうとした時、あるパリの実業家はスイスへ使者をおくって優れた技術者を探すことにしました。その時に連れ帰ってきたのが「トワル・ド・ジュイ」の生みの親、クリフトフ=フィリップ・オーベルカンプです。
染色一家に育ち、若くして高い技術をもっていたオーベルカンプは、1760年、染色に必要な良質な水源と豊かな土地に恵まれた「ジュイ=アン=ジョザス」に、自らの捺染工場を建てました。以来その場所で、多くのデザイナーと協業しながらオーベルカンプが生み出したテキスタイルこそが、由緒正しき「トワル・ド・ジュイ」なのです。
「トワル・ド・ジュイ」のデザイン
長年、禁止令が出されていたにも関わらず、人々を虜にしつづけた「アンディエンヌ」(インド更紗)。オーベルカンプは、その伝統技法と技術革新を掛け合わせることで、更にフランス貴族たちの心を掴むテキスタイルを発表していきました。
初期に取り組んだのは、主に木版を用いたプリントです。「トワル・ド・ジュイ」といえば、単一色調で描かれた田園風景のイメージが強いかもしれませんが、これは創業から10年近く経った後に用いられるようになった銅版プリントによるパターンがほとんどです。銅版プリントが採用された以降も、木版プリントは続けられており、実は「ジュイ=アン=ジュサス」の工場でプリントされたパターンの総数は、木版プリントの方がその割合の多くをしめています。
木版プリントでは、主に美しい花々がモチーフとされました。オーベルカンプは、インド由来のエキゾチックなデザインだけでなく、身近に咲く花々に目を向けフランス流の花園を描くことで、貴族たちがより親しみやすいようなパターンの数々を生み出しました。その繊細なデザインは、同時代のボタニカルアートを彷彿させるとも言われており、彼が様々な芸術からインスピレーションを受けていたことがわかります。
それは、後に「トワル・ド・ジュイ」の代名詞となる、銅版プリントで描かれた田園風景も同じです。オーベルカンプは、自身のテキスタイルに芸術的な価値を付加しようと、同時代のオランダ美術で好まれていた田園や狩猟のモチーフを取り入れたのだといいます。銅版プリントの特徴は、単一色調で、人物を配置した風景を染め上げていることで、その主題は田園風景のみならず、神話や寓話、文学など様々です。当時の文化に強い影響を与えていたロココ美術と共鳴することで、「トワル・ド・ジュイ」のテキスタイルは、存在感を強めていきました。ドレスやスカーフなどはもちろん、家具や室内装飾など、幅広い場面で使用され、多くの人に愛された「トワル・ド・ジュイ」。200年以上たった今でもその魅力は色褪せることなく、脈々と受け継がれています。
インテリアでたのしむ「トワル・ド・ジュイ」
さて、ここまでお話ししてきた「トワル・ド・ジュイ」の物語はいかがでしたか。18世紀、華やかな時代を生きたフランス貴族たちが陶酔していたその美しさは、現代を生きる私たちの暮らしにもきっと特別な彩りを与えてくれるはず。トラディショナルな魅力を活かしたフレンチテイストのお部屋づくりをしてみませんか。
まずは、友安製作所でご用意している「トワル・ド・ジュイ」のアイテムをご紹介します。
オリジナル「トワル・ド・ジュイ」ランプシリーズ
「トワル・ド・ジュイ」の最も象徴的なデザインとして紹介してきた田園風景のテキスタイルを使用した4種類のランプ。どの形でも、柄が一番綺麗に見えるように手作業で柄合わせをしているこだわりのアイテムで、「トワル・ド・ジュイ」の豊かな表情を存分にお楽しみいただけます!カラーはそれぞれ、レッド、ブルー、グレーの3色です。
トワルドジュイ・パストラル「ファブリックシェード5灯シャンデリア」
5灯のシャンデリアは、ホワイトの本体にゴールドでアンティーク風の塗装が施されており、高級感溢れる仕上がりです。ボタニカルデザインの装飾が、テキスタイルの世界観を更に引き立てます。
トワルドジュイ・パストラル「ファブリックシェードフロアランプ」
シェードには縦に骨をいれることで立体感をもたせ、上下はベージュ色のテープで飾り付けています。 木製の本体は、職人の手により、ろくろを使用した挽物で一つひとつ製作されています。丸みを帯びた美しい装飾がまるでアンティーク家具のよう。このホワイトのフロアランプは、友安製作所限定で販売しているオリジナルカラーです!
トワルドジュイ・パストラル「ファブリックシェードテーブルランプ」
ベッドやソファーのサイド、書斎、リビングやダイニングなど幅広いシーンでご利用いただけるテーブルランプです。こちらも、木製の本体は職人の手づくり。シンプルな造りながら、置くだけで空間がぱっと華やぐような存在感の持ち主です。
トワルドジュイ・パストラル「ファブリックシェード・ブラスミニテーブルランプ」
こちらは、経年美化を楽しめる真鍮と天然のブナ材を使用した、特別感溢れるミニテーブルランプです。時間の経過とともにアンティークな風合いに磨きがかかり、あなたの側でその魅力を増してゆく一台。末永くお楽しみいただけます!
「トワル・ド・ジュイ」風のインポート壁紙
スペインの有名ファブリックブランド「Vilber」の壁紙にも、「トワル・ド・ジュイ」の伝統的なスタイルを思わせるデザインを発見!細かいタッチで描かれたくすみグリーンのボタニカルデザインが可愛いらしい印象を与えます。同柄のファブリック(カーテン、カフェカーテン、ローマンシェード、クッションカバー、生地切り売り)も近日発売予定なので、トータルコーディネートもおすすめです。
「トワル・ド・ジュイ」が似合う部屋
〜フレンチコーディネートのポイントと役立つアイテム〜
フレンチインテリアの伝統「トワル・ド・ジュイ」の魅力をたっぷりお伝えしたところで、最後はコーディネートについて。せっかく「トワル・ド・ジュイ」を取り入れるのなら、お部屋全体をフレンチテイストにまとめてみたいですよね。ひと口に「フレンチインテリア」といっても、そのスタイルは様々。いくつかの代表的なスタイルをあげながら、コーディネートのポイントや、おすすめのアイテムをご紹介します。
まずどんなスタイルにも共通する、フレンチインテリアの基本的なポイントが2つ。
ひとつ目は、色使いです。フレンチインテリアの象徴的なカラーは、「白」。また「ミディアムグレイッシュトーン」や「ライトグレイッシュトーン」などに分類される、明るさがありつつも彩度を落とした上品なカラーもよく使われます。
最近では「くすみカラー」と呼ばれるような、落ち着きのあるパステルカラーや、グレイッシュな色味がトレンドですが、それらのカラーもフレンチインテリアにぴったりです。
ふたつ目のポイントは、曲線です。特にあたたかみのあるカントリースタイルなら、丸みを帯びたナチュラルな木製家具。ロココ様式の伝統的なデザインを重んじるエレガントスタイルなら、「S字」や「C字」を美しく描いた装飾が多く見られます。
フレンチカントリー×くすみカラーの壁
「フレンチカントリー」は、田舎町にゆったりと佇むお家をイメージした素朴なスタイル。白や明るい色味でまとめ、インテリアは木製などナチュラルな風合いのものを選びましょう。
おすすめアイテムは、壁紙に直接塗れるペンキ 「メゾン」です。ホワイト、グレージュ、グレー、ネイビー、ラベンダー、グリーン、ブルーグレーと、甘さ控えめなフレンチカラーの7色展開。塗るだけで、お部屋にフレンチテイストの明るさをプラスします。家具や小物に塗ってリメイクしてみるのもいいですね。
フレンチシャビー×腰壁風DIY
続いてご紹介するスタイルは、「フレンチシャビー」。「シャビー」とは、「古い」を表す言葉で、ヴィンテージやアンティークの風合いを好むスタイルです。特徴的なアイテムとして、錆びたアイアンや、古材仕上げの木材などが挙げられます。そこでおすすめしたいのは、木製の壁材「ハッティー」を使った腰壁風DIYです。先ほどご紹介した「トワル・ド・ジュイ」のフロアランプとも相性抜群ですね!
ロマンティックスタイル×パリのお花柄カーテン
「ロマンティックスタイル」は、フレンチスタイルの中でも、最もガーリー。お花のモチーフやフリルを用いたデザインが好まれます。ということで、今回は友安製作所のオリジナルカーテン「Garden in Paris」シリーズをセレクト。その名の通り、パリの庭に咲く花々からインスピレーションを受け、現地のデザイナーが描いたテキスタイルです。この発想は「身近に咲く花々に目を向け、フランス流の花園を描いた」とされる、「トワル・ド・ジュイ」初期の木版プリントのスタイルと通ずるものがありますね。
「Garden in Paris」シリーズのデザインは、20種類ほど。カーテン、ロールスクリーン、クッションカバー、襖紙など9つのアイテムがあり、トータルコーディネートもお楽しみいただけます!
フレンチモダン×大理石風フロアタイル
「フレンチモダン」とは、フレンチテイストとモダン(=現代的)なアイテムを融合させたスタイルです。例えば、曲線を重視するフレンチスタイルの中にあえて直線的なデザインを取り入れたり、大理石やガラス、レザーなどのアイテムでモダンな雰囲気を演出したりすると良いでしょう。今回ご紹介するのは、はめ込み式の床材「リジッドクリックプレミアム」。どんな場所でも並べるだけで簡単に大理石調や、石目調の床に大変身!賃貸でも理想の床色を叶えられます。
エレガントスタイル×フレンチヘリンボーン
「エレガントスタイル」は、王宮などフランスの伝統的な室内装飾のイメージに近いものです。ロココ様式のデザインを用いることが多く、まさに「トワル・ド・ジュイ」黄金期の雰囲気と重なります。そんな伝統的な装飾のひとつ「フレンチヘリンボーン」を取り入れてみるのはいかがでしょう。「フレンチヘリンボーン」は木を組み合わせてつくるV字型が連続した柄のことで、現代でも床材に用いられることが多いデザインです。ちなみにこの柄を最初に床に使用したのは、ルイ14世統治下のヴェルサイユ宮殿だったとか。今回ご紹介するのは、「フレンチヘリンボーン」を美しくプリントしたクッションフロア。両面テープを使って施工することができます。
おわりに
今回は、フレンチスタイルを代表する伝統的なテキスタイル「トワル・ド・ジュイ」にフォーカスし、その歴史から、コーディネートのポイントまでを盛りだくさんでお届けしてきました!「テーマをもったお部屋づくりをしてみたい!」という想いを持つ方は多いと思いますが、何から変えるか考えて実践することは簡単ではありませんよね。
この記事が少しでも、フレンチスタイルに憧れるみなさんのお役に立てていれば幸いです!
【参考文献】2016年、Bunkamura ザ・ミュージアム・郡山市立美術館、「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」、印象社