プロのこだわりが詰まった「オリジナル施工道具」の製造現場へ

プロにも愛用者が多い友安製作所の『オリジナル壁紙施工道具』
友安製作所がこだわったデザインや、プロにも認められる「質」を実現しているのが、ブレード(刃先)から持ち手まで一貫して製造を担当してくれている北野刃物製作所さんです。
今回は、企画担当、デザイナー、カメラマン、ライターのチームで、その北野刃物製作所さんにお邪魔し、製造工程を見学させていただきました。

老舗刃物メーカー「北野刃物製作所」

創業100年以上の刃物メーカーである同社は、社名が表すとおり創業当時は肉切り包丁やロープを切るような特殊な「刃物」を製造していました。
今から60年以上前に、塗装用の施工道具を製造しはじめ、現在は内装職人が使用する壁紙施工道具一式を製造するメーカーとなっています。
刃先から持ち手、仕上げまで一貫して自社製造することで、全工程にモノづくりのこだわりを詰め込んでいます。

全国の有名職人さんから指名で製作を受けるなど、内装業界の中でも知る人ぞ知るメーカーとして高く評価されています。
ちなみに、人気の職人系YouTuberから依頼されて製作したパテベラが、大人気商品になったこともあるんです。

一つ一つ職人の手作業で

パンチングプレスでブレードの穴開け

私たちが一番驚いたのは、製造工程の多さと、その中でも「手作業」が非常に多いこと。

約20工程。ほぼ手作業。

例えばブレード部分の穴開けは、職人さんがパンチングプレスで微調整しながら、一枚一枚手作業で開けています。
持ち手部分の工程でも、木材のペーパー掛けから、割り込み、塗装、ロゴ入れなども手作業。
吹き付け塗装は、面ごとに塗装をするため、乾燥時間を含めて数日かかる工程です。

もちろん機械をメインで使う作業もありますが、ボタン一つ押して「機械にお任せ」とはいきません。
職人さんが微調整しながら、最後は必ず、目で見て、手で触って、出来具合を確認します。

ブレードの削りを確認する職人さん

ブレードのステンレスは、片面「0.05mm」という目に見えないほどの削りを入れる場合も。
職人さんが、器具と手触りで削りを確認します。

手間暇かけた工程とは?

持ち手のペーパー掛けも一つずつ

約20工程もの手間がかかる施工道具の製作。
簡単に取り上げただけでも、下記のような工程がありました。
幾人もの職人の手を経て完成するその道具たちは、いわゆる「効率化」とはかけ離れた「手間暇」が詰まったアイテムなのです。

【ブレード部分の工程】
①素材のステンレスを削る
②ステンレスのカット
③パンチングプレスで穴開け
④バリ取り

【持ち手部分の工程】
①木材にシーラーを塗る
②ペーパーをかける
③NCルーターもしくはレーザーで木材をカット
④輪郭をカット
⑤木材の貼り付け
⑥穴開け
⑦ブレードを付けるための割り込み
⑧側面のペーパー掛け
⑨塗装(吹き付け)・乾燥
⑩ロゴ入れ(シルクスクリーン)
⑪ブレードとの組み立て
⑫リベット止めする穴を整える
⑬リベット止め
⑭ブレード部分の噴き上げ
⑮袋詰め

持ち手部分の割り込みを付ける作業

こだわり:素材選びがモノづくりの基盤

ブレード部分の加工

北野刃物製作所さんは、刃物がルーツのモノづくり企業というだけあり、ブレード部分のステンレスにもこだわりがあります。
ステンレスの種類は、なんと世界で約200種類、日本だけでも65種類。
その中で、北野刃物製作所さんがブレードに使うのは、「バネ性があるもの」

「ステンレスのことを熟知せずにブレードを作ると、バネ性のない素材を選んでしまい、使っていると曲がったまま戻らないヘラになってしまいます」とは、同社の北野社長。

このステンレスも、お客様のニーズによって、特殊鋼を使って焼き入れを行い、さらにバネ性を強くする場合、カーボンを多く含むステンレスを使って、しなりを多く出す場合など、「使い手の使いやすさ」や要望に合わせて最適な素材を選び、加工を行っていきます。

モノづくりは、加工の技術にスポットライトが当たることが多いのですが、そもそも元の素材が適していない場合、理想の製品をつくり上げることができません。

北野社長の話をお聞きし、素材のメリット・デメリットを知り尽くしているからこその「素材を見る目」が、モノづくりの基盤をつくり上げていると感じました。

極薄の削りを入れたステンレスのブレード

つくり手の想い:求められたものをカタチに

「なぜここまで丁寧につくってもらえるんですか?」
率直な疑問として私たちが投げかけた問いに、北野社長が答えてくれました。

「プロとして、製造元として、『こんなふうに使いたいから、合うものをつくってほしい』そう課題をいただいたら、試行錯誤してつくり上げたいんです。図面がないとできないなんて、そんなのプロじゃないでしょ?  最も適した素材の選定から、対価の見合う商品にするために自分たちで悩んで、考えて、工夫して、お客さんの要望を実現する。それがプロだから。個人の職人さんの1点ものだって引き受けるし、ジャンルが違ってもいい。うちは施工道具屋だけど、求められれば中華鍋だってつくりますよ」。

北野刃物製作所さんがこだわるのは、「モノづくりの原点」とも言える、自ら考え、試行錯誤し、お客様の想いを実現すること。
友安製作所の『オリジナル壁紙施工道具』にも、そのこだわりを存分に詰め込んでいただきました。

友安製作所『オリジナル壁紙施工道具』とは?

北野刃物製作所さんとコラボした友安製作所のオリジナル施工道具は、シリーズで全21種(2024年4月時点)。
一般のご家庭のDIYで使っていただけることはもちろん、プロの職人さんからも支持を得ている製品です。
その理由が、デザイン性の高さと使いやすさです。

★他とかぶらないデザイン性の高さ

作業用ポーチに入れても様になるデザイン

「身に着けていてカッコ良くて様になるものがほしい」「他の職人と差が付くデザイン性がほしい」といった、質だけでなくデザイン性の高さにも重点を置くプロが増えています。

それぞれが好みの施工道具を探す中で、これまでの施工道具にはなかったおしゃれなニュアンスのあるネイビーブルーと、ポイントになる「TOMOYASU」のロゴが人気の理由です。
また、プロの現場は、多くの職人さんが出入りするため、道具の取り違いによるトラブルも多いそうです。
そんなときにも、こういった他にはないデザインが役立つのだそうです。

このネイビーブルーの塗装も、北野刃物製作所さんの手作業
片面ずつ乾燥しながら塗装するため、数日も手間がかかる工程です。
そして、このロゴもシルクスクリーンという方法で、職人さんが手作業の印刷を施してくれています。
北野社長に、このデザインの要望があった時のことをお聞きすると、

「友安製作所さんから、このデザインの要望をもらったときには、『なるほど!』と思いました。これまで、こういった色やロゴの細かなデザイン性といったところは、私たちの発想にはないものでしたから。最初に細い持ち手(両地ベラ)にシルクスクリーンをしたときには、一発勝負で本当に緊張しましたけどね(笑)」。

職人さんが丁寧に塗装してくれます

★プロも愛用する「使いやすさ」

そして、もちろんプロの現場にも使える「質」も人気の理由です。
持ち手は馴染みやすさを追求し、ヘラのブレード部分は一般的なDIY用に比べ、様々な現場にも対応できるよう錆びにくくバネ性があるステンレスを使用しています。

例えば、上の写真の「Z型 地ベラ」は、壁紙の余分な部分をカットする道具。
ブレードをZ型に曲げたことによって、「枠周りが見やすくなった」と友安製作所工務店のプロも愛用しています。
少し厚みのある「厚み1.2mm」のバージョンは、ブレードに穴を開けることによって、軽量化を図っています。

スペシャルコート地ベラ


こちらのゴールドの「スペシャルコート地ベラ」は、ステンレスにセラミックコーティングを施し、耐摩耗性、離型性(非粘着性)、意匠性をプラス。

セラミックコーティングによって得られる耐摩耗性は、カッターナイフとブレードの擦れによる摩耗を少なくしてくれます。
また、ノリなどが付着した際に剥がれやすくなる離型性(非粘着性)も備わっています。

他にもオリジナル施工道具には合計21種の施工道具があり、それぞれに工夫し、手間暇かけてつくり上げています。

好きな道具ならDIYがもっと楽しくなる

「形から入る」というとマイナスのイメージがあるかもしれませんが、まだDIYを始めてない人や、DIY初心者の人にも、この施工道具をきっかけにDIYに夢中になってほしいと思っています。

使いやすいというだけでなく、おしゃれな見た目は、DIYへのモチベーションやワクワク度も上げてくれるはず。
北野刃物製作所さんと友安製作所のこだわりがつまった施工道具で、ぜひDIYを楽しんでください。

北野刃物製作所さんの工場見学ギャラリー

北野刃物製作所さんの工場見学で撮影させていただいた、さまざまなモノづくり現場の写真をご紹介します。

▲リベット止めする穴を整えています。この作業も一つずつ手作業です。

▲丁寧なペーパー掛けも手馴染みの良さの秘訣です。

▲ブレードを付けるための割り込みをしたもの(上)と、していないもの(下)。

▲吹付塗装をした持ち手がずらりと並びます。