今から100年以上前のイギリスで、芸術家・詩人・実業家などとして活躍し、“モダン・デザインの父”と称されているウィリアム・モリス。今でもインテリアや雑貨など世界中の様々なシーンでウィリアム・モリスのデザインが使用されています。そんな多くのファンに愛されるウィリアム・モリスのデザインについて、あまり知られていない「実は○○!」という事実や、インテリア実例&人気柄をご紹介していきます♪
目次
ウィリアム・モリスが今も愛される理由
ウィリアム・モリスのデザインは、100年以上経っても魅力的なデザインとして 多くの人に愛され、親しまれています。日本でもファンが多く、美術館などで開催されるウィリアム・モリスに関する展示は、毎回多くの来場者があります。
そんなモリスのデザインの特徴は、≪自然≫をモチーフにしたもの。その自然を平面の中で抽象的に描いているにもかかわらず、まるでそこに本物の草木や花たちが茂っているように、イキイキとした自然を感じられるデザイン。それが、100年以上経ってもモリスのデザインが愛される理由なのではないでしょうか。
ウィリアム・モリスの人気柄『いちご泥棒』の実は…動物を描くのが苦手だった!?
ウィリアム・モリスのデザインの中で、最もポピュラーでファンが多いと言われているのが、こちらの『いちご泥棒』。愛らしい小鳥が、農家のいちごをついばんでいるところが描かれています。草花など植物を描くのが得意なモリスでしたが、実は動物を描くのは苦手だったようで、この小鳥や同じく人気の高い『兄弟うさぎ』のうさぎといった動物たちは、モリスの親友である建築家フィリップ・ウェッブが描いたようです。ちょっと意外な話ですよね。
『いちご泥棒』 は、もともと更紗(植物や動物、人などの模様を染め付けた木綿の布。コットン・プリント)のデザイン。モリスが苦労して完成させたインディゴ染料による深い青が印象的です。
◆ウィリアム・モリス『いちご泥棒』のインテリア実例
レトロな雰囲気が和室にもしっくり馴染むウィリアム・モリス。こちらの和室では、フロアスタンドとテーブルランプにモリスのテキスタイルデザインが使われています。テーブルランプが『いちご泥棒』、フロアランプは葡萄の絵柄が愛らしい『ヴァイン』です。 こういった照明にもウィリアム・モリスのファブリックが使われています。
ウィリアム・モリスの人気柄『ピンパーネル』の実は…規則性は嫌い!?
こちらもファンの多い『ピンパーネル(るりはこべ)』は、上の画像のように左右対称で真ん中に鏡を立てたように反転させたデザイン「ターンノーバー」と言われる方法を使った初めての作品。この規則性のあるデザインは、後々ウィリアム・モリスの代表的なデザインの形になっていきます。
しかし実は、初期の頃のモリスは同じパターンが繰り返すような規則性を嫌い、なるべくそれが出ない(わからない)ようなデザインをつくっていたようです。規則性のない“自然”を描いてきたモリスのこだわりだったのかもしれませんが、テキスタイルを手掛けるようになって、こういったパターンを良い意味で活かすようになったようです。
ピンパーネルに描かれているのは、ルリハコベとポピーの花。可憐で小さなルリハコベが広がる野の上を、まるで今も風に吹かれているように描かれたたおやかなポピーの花が印象的です。 このデザインの壁紙は、モリス自身の晩年の自宅「ケルムスコット・ハウス」にも使われていたそうで、モリスもお気に入りのデザインの一つだったようですね。
◆ウィリアム・モリス『ピンパーネル』のインテリア実例
リビングの壁一面だけに、アクセントフォールとしてウィリアムモリスの壁紙 『ピンパーネル』 を貼っている事例。アンティークで優しい雰囲気が素敵ですよね。ウィリアム・モリスの壁紙は、こういった大きな柄を大胆に使ったものも多いため、最初は壁のどこか一面だけに取り入れると馴染みやすいですよ。
ウィリアム・モリスの人気柄『ひなぎく』の実は…不人気でモリスもがっかり!?
『ひなぎく』は、1862年にウィリアム・モリスが初めてデザインした3つの壁紙のうちの一つ(他は『 果実あるいはざくろ 』『格子垣(トレリス)』)。 草花の素朴で優しいデザインが印象的で、 モリスが後期にデザインした 植物同士が密接したようなデザインとは異なります。
とても愛らしく魅力的なデザインですが、実は、この初期のデザインはあまり反響がなかったようで、モリスもがっくりと肩を落とし、しばらくは壁紙デザインを中断してしまったそうです。しかし、後々になるとその素朴な魅力が伝わったのか、最も人気のあるデザインの一つになったそうですよ。
◆ウィリアム・モリス『ひなぎく』のインテリア実例
洗面スペースにウィリアム・モリスの壁紙『ひなぎく』を使用した実例。この壁紙一つで、愛らしいアンティークな空間が生まれていますよね。照明や洗面台が、さらにヨーロピアンな雰囲気を加えて、とても素敵な洗面スペースに。 ちなみに、ひなぎくは古い民衆民芸をモチーフにしたデザインだそうです。
ウィリアム・モリスの人気柄『柳の枝』の実は…描くのは2回目!?
『柳の枝(ウイローボウ)』もウィリアム・モリスが愛したモチーフの一つ。現在広く壁紙やテキスタイルなどに使われている上の写真のデザインは、1887年にデザインされたものですが、実は、1874年にも「柳」を題材にデザインをしているんです。最初のデザインは、柳の下の地に小石を敷き詰めたような柄が描かれていましたが、新しいデザインでは無地。昔のデザインを新しい感覚でブラッシュアップしたようです。
柳のモチーフは、単独のデザインだけでなく、様々なデザインの背景などにも描かれていました。また、モリスの最愛の妻・ジェーンの部屋の壁紙にも使われていたことから、モリスが好んで使っていたモチーフでもあるようです。
◆ウィリアム・モリス『柳の枝』のインテリア実例<
風に揺れる柳のモチーフは、重めカラーのアンティーク家具に柔らかな印象を与えます。アンティーク家具は暗くなりがちですが、無地の背景に柳のソフトなグリーンが映えて明るさもプラスされますよね。
こちらは「柳の枝」の壁紙と、色違いのフロアランプを使ったインテリア。うるさくなりがちな柄と柄の組み合わせですが、同じ「ウィリアム・モリス」のデザインにすることで、逆に統一感が出て、センスアップした空間に♪
まだまだある!ウィリアム・モリスを使ったインテリア
◆可愛いうさぎ柄の『兄弟うさぎ』の実例
雰囲気のある素敵な寝室の壁紙は、ウィリアム・モリスの『 兄弟うさぎ』。絵画とレトロなチェストや電気スタンドが、モリスの壁紙にピッタリですね。
『兄弟うさぎ』についてもともとは更紗(コットン・プリント)のデザインとして作られた「兄弟うさぎ」。向き合ったうさぎと小鳥がとても愛らしいデザインです。「いちご泥棒」の小鳥と同じく、こちらの動物たちもモリスではなくフィリップ・ウェッブが描いたもの。愛らしいうさぎ柄は、子ども部屋に使う方も多いようですよ。
◆ウィリアム・モリスのマスキングテープを使ったアイデア
こちらの写真は、なんと階段にマスキングテープを使ったアイデア。階段の蹴込み板に ウィリアム・モリスのデザインが印刷された マスキングテープを貼って、一段一段がモリスのギャラリーのよう。マスキングテープなら、手軽にモリスのデザインが取り入れられますよね。真ん中の鳥のデザインは、『鳥とザクロ』。
『鳥とザクロ』について『鳥とザクロ』はモリス商会が最後に出したパターン壁紙。ウィリアム・モリスの後継者と言われるジョン・ヘンリー・ダールのデザインです。モリスの死後30年経った1926年、モリスを懐かしむようにモリスのデザインでおなじみだったザクロや小鳥のモチーフを描いたものです。
◆柳を中心にボタニカルなインテリア
こちらも「柳の枝」の壁紙を使ったインテリア。グリーンやブルー系で統一されたインテリアは、何種類もの柄を使っていても統一感があってオシャレですよね。壁紙の柳だけでなく、クッションカバーにも植物を使って、ナチュラルな雰囲気でまとめているのもポイント♪
ウィリアム・モリスの人気柄おすすめアイテム
◆友安製作所限定のカラーも!モリスのテーブルランプ
人気の「いちご泥棒」のテーブルランプと壁紙。
テーブルランプのカラー「ライトブルー」は友安製作所限定のカラーです。同系色の壁紙と合わせれば、柄物同士でも柔らかな印象に。他にも、 ブルー、ヴァイオレット、レッド の3色があり、洋室に合わせればアンティークなヨーロッパ風に、和室に合わせればレトロな大正ロマン風にと、和洋どちらの空間でもウィリアム・モリスの魅力を体感できます。
◆モリスのクッションフロアシート
1868年頃に作られた人気柄「ダイアパー」をアレンジしたクッションフロアシート。
レトロな雰囲気がステキな人気の柄です。こちらのクッションフロアシートは土足もOK! 写真のような水廻りにも使いやすく、消臭機能もついているので、玄関やキッチン、トイレや洗面所など様々な場所でモリスのデザインを楽しむことができます。
【参考文献】
「ウィリアム・モリス ~クラシカルで美しいパターンとデザイン~」解説・監修:海野弘