【気になる八尾のあの工場】 vol.10 ミナミダさん

こんにちは!友安製作所 広報のCyan(シアン)です。
今日は連載「気になる八尾のあの工場」の第10弾をお届けします。

友安製作所が拠点とする大阪府八尾市の、ものづくり企業の魅力を発信していくこの連載。
実は今回で最終回となります。ということで、連載の大トリを飾っていただくべく、今回は友安製作所との関わりも深い株式会社ミナミダさんへお邪魔しました!

ミナミダさんは1933年の創業以来、鉄を扱うものづくり企業として成長をつづけ、今や海外にもいくつかの拠点を構えるなど、ものづくりの力で八尾から世界へ羽ばたく企業さんです。そんなミナミダさんの歴史を振り返ってみると、老舗企業でありながら、そこには幾重もの革新的なチャレンジがあったことがわかります。今では単なるものづくりに止まらない4つの事業を展開するミナミダさん。その核心に迫るべく、4代目社長の南田剛志さんにお話をうかがいました。

株式会社ミナミダ
1933年創業の金属部品メーカー。自動車用を主としたボルトやナット等の製造を600種類以上手がける他、現在では「ものづくり」にまつわる事業を多角的に展開されています。
【ミナミダさんHP:https://minamida.co.jp/

ミナミダさんの4つの顔

ミナミダさんは1933年創業。2023年に創業90周年を迎えられた老舗のものづくり企業です。創業の地は、八尾市のお隣、東大阪市。地場産業である線材加工業を営み、はじめは鉄道に使うネジなどをつくっていました。実は私たち友安製作所も、同じく東大阪市で創業し、線材加工業から始まった会社。両社の歴史にそんな共通点があることを初めて知って驚きました!

ミナミダさんの工場でみつけた線材製品の材料
現在の線材加工の現場

スタート地点は近しいですが、もちろんそこからの歩みはそれぞれ。戦前に創業されたミナミダさんでは、戦争の影響が色濃くなると、工場は停止を余儀なくされ、自由にものをつくることが出来なくなってしまった時期もありました。しかし、戦後になると状況が一変。物をつくれる(=その環境と力がある)ことに価値がある時代がやってきます。そんな中ミナミダさんでは、2代目として南田社長の祖父が会社を引き継ぎ、ボルトの製造に力をいれました。日本が工業化していくなかで、ミナミダさんも成長を遂げていきます。そして、3代目である南田社長の父が始めたのが、現在も主力事業のひとつである、自動車のボディとなるパーツの製造です。

「代ごとに新しいことに挑戦して、事業を広げてきた」と語る南田社長。現在は大きく4つの事業を展開していると教えてくださいました。1つ目は、冷間鍛造の技術で自動車の部品をつくる事業。冷間鍛造は、様々なものづくりに挑戦してきたミナミダさんのベースとなっている技術です。

冷間鍛造とは、金属を金型で挟み、常温のまま圧縮成形する加工技術のこと。熱を加えながら形成する熱間鍛造に比べ、寸法精度が高くなるほか、切削加工のように削り屑をだすこともなく、メリットの多い金属の加工法です。近年では「カーボンニュートラル」の視点から評価されることもあり、ミナミダさんでは冷間鍛造のことを「古くて新しい技術」と表現されています。この冷間鍛造の技術を発展させてきたことで、自動車部品の製造もできるようになっていったのだといいます。

「冷間鍛造」でパーツを形成する過程

ミナミダさんが現在手がける事業の2つ目は、「ベトナム人エンジニアの人材紹介事業」です。あれ、さっきまでものづくりの話をしていたのに、人材…?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これもものづくりにとって大切な一要素。近年では日本のものづくりを、ベトナムからやってきた技術者の方々が共に支えてくれているという状況があります。そこでミナミダさんでは、自社がベトナム人のスタッフとの円滑な協業体制を築いてきたノウハウを活用し、ベトナムからの人材を求めるものづくり企業との橋渡し役となるお仕事をされているのです。

ミナミダさんで活躍する製造メンバー

そして、今やものづくりを担うのは人の手だけではありません。ミナミダさんでは、協働ロボットを用いた自動化にも取り組まれています。そして、ベトナム人の人材紹介と同じように、そこから生まれたのが、3つ目の事業「SIer事業」です。この事業では、協働ロボットのシステム設計から周辺機器の製作、システムアップまでをワンストップで手がけられています。自社の工場で改善効果を実現したノウハウを用いて、可能な限りコストを抑えたシステムを構築し、中小企業のものづくりをアップデートすることを目指しているそうです。

「SIer事業」で手がける自動化ロボットのイメージ

ここまでは、ビジネスをサポートする仕事、いわゆる「BtoB」の事業をご紹介してきましたが、ミナミダさんでは2022年に新たに立ち上げた「BtoC」事業、一般のユーザーさんに向けた商品開発にも力を入れておられます。それが4つ目の事業です。

そんな自社製品の第一号としてリリースされたのがコンパクトな解凍プレート「OMRIQ PLATE」。自動車部品の製造に欠かせないヒートシンク(放熱部品)の技術を活かした解凍プレートで、凍った食材を常温に比べて最大2.5倍の速さで解凍することができる優れもの。毎日のお料理ではもちろん、アウトドアでも活躍するアイテムです。

解凍プレート「OMRIQ PLATE」

自社の技術を活かし、自らの名前を掲げた唯一無二のものづくり。長年「B to B」の製造業に注力してきた企業にとって決して簡単なことではありませんが、それは南田社長の念願でした。そして遂にその大きなチャレンジに踏み出すきっかけとなったのは、「コロナ禍で落ち込み気味だった社内の雰囲気を明るくしたい」という想いだったといいます。社員のみんなにポジティブなニュースを届けたい。そして、これからの採用活動や広報に役立つような取り組みを。そんな希望を込めて、自社商品を開発するプロジェクトがスタートしたのでした。

そんな挑戦の題材として選んだのが解凍プレート。料理やアウトドアが好きな人に注目されつつあるものの、まだまだ「一家に一台!」というようなアイテムではありません。だからこそ「まずはニッチなものから始めてみよう!」という南田社長の想いと重なりました。そうして誕生した「OMRIQ PLATE」は応援購入サイトMakuakeでのクラウドファンディングを見事に成功させ、ミナミダさん初の自社商品となりました。

「今をもっとおもろく」

ここまでご紹介した通り、長年培ってきた技術力を核としたものづくりを起点に、様々な事業を展開するミナミダさん。老舗企業というイメージに反して、とても柔軟で好奇心旺盛な印象を受けました。では実際に働く社員の方々は今のミナミダをどう感じているのでしょうか。「会社のユニークだと思うポイント」を伺ってみると、南田社長は、「同じことをやり続けるのが苦手なところ」と教えてくださいました。

せっかくなので、インタビューに同席していた若手社員の石田さんにも同じ質問を。すると「社内のノウハウを活用して、他社の役にたちたい!と考えているところ」と、それぞれにチェレンジングなイメージを裏付けるようなお答えをいただきました。

お話をしてくださる南田社長

「製造業としては非効率だけれど、広く浅くやってみたい気持ちがある」という南田社長。その考え方は数年前に刷新した企業理念「今をもっとおもろく」にも繋がっているといいます。「おもろい」という感覚を大切にするからこそ、非効率でも新しい挑戦をしたり、自社のノウハウを他社のために提供したりする豊かな発想が生まれているのです。

常にやったことのないことに挑戦すること。そして、お客様に「NO」と言わないことが、ミナミダさんのものづくり企業としてのこだわりでもあります。そして営業職から入社して、今では工場長を務めているなど、その信念に共感する仲間も多くいるそうです。

ちなみに「今をもっとおもろく」という企業理念は、南田社長自身が考えた言葉。そして、これを掲げた直後に、理念共感を決め手に入社してきたのが今回同席してくださった石田さんでした。南田社長いわく、「おもろい」とは、「自分の成長を感じる瞬間」のこと。その「おもろさ」がモチベーションになって、ミナミダのものづくりは続いてきたと感じているといいます。

そんなメッセージがまだ学生だった石田さんの心に刺さり、他社の内定を辞退してミナミダさんへ入社を決めました。当時は自社商品の開発に取り組んでいる真っ最中だったこともあり、「言葉だけでなく実際に挑戦をする会社と、南田社長を支えたい!」と思ったそうです。そしてその決意の通り、この3年間積極的にお仕事に取り組んできた石田さん。最近では「あなたが入ってくれて会社が変わってきた」と先輩社員から感謝のお手紙をもらったのだとか。心強い若手社員も加わり、ミナミダさんの挑戦はまだまだ続いていく予感です!

オフィスでお仕事中の石田さん

八尾でだから、もっとおもろく

新しい経験に臆さず挑むのが南田家の家系だそうですが、最近では八尾のものづくり企業に刺激を受けている部分もあると南田社長はおっしゃいます。

自社商品の企画も、魅力的なプロダクトをつくる八尾の企業との出会いがあって「うちもやってみよう!」と思えたそうです。

もともとは地域に繋がりや愛着は特になかったという南田社長ですが、八尾市発祥のオープンファクトリーイベント「FactorISM」への参加をきっかけに、八尾へのイメージが変わったといいます。新潟県の燕三条で町をあげてオープンファクトリーの取り組みが盛んに行われているのを知り、「うちの地元でも!」と思っていたところ出会ったのが「FactorISM」。すぐに参加を決め、「FactorISM」の活動拠点でもある、八尾のものづくり企業の共創の場「みせるばやお」にも足を運ぶようになりました。そこでの活動を通して、尊敬できる経営者の先輩に出会ったり、まちの企業の若手社員たちが繋がりあったりしていることに希望を感じているといいます。

ミナミダさんの「FactorISM」の様子

「地域が好きになって、子どもたちのことも考えるようになった」という南田社長。今年も10月24日から開催される「FactorISM」のオープンファクトリーでは、たくさんの子どもたちにものづくりの魅力を伝え、工場でしかできない特別な経験をしてもらうために、準備に励まれているとか!この記事を読んでくださったみなさんもぜひミナミダさんのオープンファクトリーに足を運んでみてくださいね。

ものづくりの、色んな面を支えたい

ミナミダさんが手がけるパーツ

小さなパーツの製造に始まり、現在4つの事業でものづくりにフォーカスするミナミダさん。メーカーの域を越え、ものづくり企業にとって大切な「人」と「機械」という2つの要素にアプローチしてたことを糧に、今後はさらに製造業の様々な面で役立つ会社を目指しています。

例えば自社工場を構える大分県国東市では、まちの課題である人口減少をくいとめ、活性化に取り組んでみたいという思いがあるのだそう。いつもミナミダさんの中では、次なるチャレンジの芽がどんどん育まれているようです。

おわりに

「今をもっとおもろく」。それはミナミダさんの行動指針であると同時に、お客様や、未来の仲間に向けたメッセージ。コーポレートサイトでは、ミナミダさんで製造されている小さなパーツを組み合わせた文字で、大きく描き出されています。

画像をタップ

実はこのコーポレートサイトは、私たち友安製作所が手がけたものなんです!ご存知の通り、友安製作所はWeb制作会社ではありませんが、自社サイトなどを社内で制作していることから、お任せいただくことになりました。

会社の顔ともいえるコーポレートサイト。「記憶に残るものをつくりたい」と考えていたところ、八尾で出会った私たちのことを思い出して下さったそうです。「八尾で活動する社長や社員さんを見ていていたから、お任せしたいと思った」とありがたいお言葉をいただきました。

ミナミダさんの想いや事業を理解し、サイトに落とし込むためにたくさんのヒアリングやディスカッションを重ねながら作り上げていたコーポレートサイト。ものづくり企業同士だからこそ分かり合えることも多いだろうとお互いが信じて挑んだこのプロジェクトは、友安製作所にとっても「おもろい」経験となりました。

さらに、今回インタビューの会場となったミナミダさんの本社にある休憩室は、友安製作所工務店がリノベーションをさせていただいた空間でした。色んな場面で友安製作所を選んでいただけて嬉しい限りです。ミナミダさんが八尾のまちで活動する私たちを見て「ぜひ一緒に」とお声がけくださったのと同じように、私たちもミナミダさんのチャレンジングな活動にもいつも目を惹かれています。まさに「気になる八尾のあの工場」だったミナミダさん。今回その歩みや価値観を改めて深く知ることができました。

南田社長、たくさんお話を聞かせてくださってありがとうございました!

さて、これにて連載「気になる八尾のあの工場」はおしまいです。

10回の取材を通して、私たちも八尾の企業の力強さと、かっこよさに釘付けになってきました。また、みなさん八尾のものづくり企業の繋がりを面白がり、何らかの糧にしようとしていることが印象深かったです。まちの中で惹かれ合う企業がたくさんあるなんて、やっぱり八尾は面白いまち。そんなものづくりのまち八尾から、次はどんなコトやモノが生まれていくのか。ますます楽しみに感じています。

読者のみなさまにもこの記事を通して、少しでも八尾のまちに興味を持っていただけていたら嬉しいです。

「気になる八尾のあの工場」ありがとうございました!