こんにちは!友安製作所 新米広報のCyan(シアン)です。
今日は連載「気になる八尾のあの工場」の第7弾をお届けします。
友安製作所が拠点とする大阪府八尾市の、ものづくり企業の魅力を発信していくこの連載。
今回はアパレル・生活関連業界の副資材メーカー、カネエム工業さんへお邪魔しました!
カネエム工業さんでは1947年の創業以来、金属プレス加工を用いて、あらゆる服や靴の一部となるボタンや留め具を製造されています。「副資材メーカー」と聞くとあまり馴染みがないかもしれませんが、誰もが一度は身につけたことがあるような有名ブランドのアイテムに使われるパーツを手がけることもしばしば。実はみなさんにとって身近な存在かもしれません!
今回お話を聞かせてくださったのは、経営企画室室長の北村悠太郎さん。会社のこれまでの歩みや、ものづくりのスタイル、八尾のまちへの想いをうかがいました。
金属プレスのプロとして
カネエム工業さんは1947年に「森藤金属」として大阪市内で設立。金属プレスのプロとして75年以上の歴史を持つ会社さんです。創業者は北村さんの曽祖父で、創業期に自社のものづくりを確立しようと奮闘したのが北村さんの祖父でした。
そもそも金属プレスとは、「金型」と呼ばれる型に金属をあて、機械で圧力をかけることで金属を切り抜いたり、形をかえたりする技術のこと。カネエムさんでは金型の形成からプレス、「表面処理」と呼ばれる着色や磨き、そして「加工」と呼ばれるパーツの組み立てまで、ひとつのハトメやボタンが生まれるまでの全ての工程を担っています。
金属プレス一筋で築き上げてきた長い歴史の原点は、スニーカー用のハトメ(靴紐を通す穴のパーツ)でした。
そこからベルトのハトメ、洋服のボタンやリベットなど、徐々に商品の幅を広げていきました。そんな中会社を飛躍させるきっかけになったのが、リベット用の鋲(びょう)の開発です。鋲とは、ジーンズなどにリベットを打ち付ける留め具として使われるパーツのこと。
この時カネエム工業さんが開発した鋲は、それまで一般的に使われていた鋲とは異なる素材と製法を用いた全く新しいものでした。「線材」と呼ばれる線状の金属でつくられていた当時の鋲は、製造コストが高い上に品質が悪いものも出回っているという問題を抱えていました。それを見かねた北村さんのお祖父様は、海外製の鋲を参考にし、板材を使ってこの鋲づくりに挑戦することに。板材から針の様な留め具を切り出すことは簡単ではありませんでしたが、試行錯誤を繰り返すことで完成に漕ぎ着け、唯一無二の技術として特許も取得しました。
この新しい鋲で成功したことで、会社は成長し、さらに多くの商品づくりに取り組める様になっていきます。「今あるものをもっとよく」と考え、1を100にするのが得意だったというカネエム工業さん。創業期にはこの鋲の他にも、特許をとった商品が複数ありました。
そんな歴史を振り返りながら、「昔のカネエム工業の精神をリスペクトして、僕らも頑張らないと!」と語る北村さん。パワフルで野心家だったというお祖父様とは一緒に働いてみたかったと思っているそうです。
それがカネエムクオリティ
カネエム工業さんのものづくりのこだわりは、最高の品質をつくりつづけること。例えば1万個同じボタンをつくるなら、1万個全てを同じ品質で仕上げる。一見当たり前のことのように思えるかもしれませんが、実は簡単ではありません。
カネエム工業さんの工場にお邪魔すると、プレス機は勝手に材料を吸い込み、ガチャンガチャンと一定のリズムを奏でながら、パーツをうちぬいています。自動で作業が進行されているからこそ、全て同じように仕上げるには的確な管理が不可欠です。
またパーツづくりを一気通貫で行うカネエム工業さんでは、ひとつのパーツを生み出すために必要な4部門が100%の仕事をして協力し合うことがなければ、品質の徹底は成し遂げられません。実はその4つの部門は、ひとつにつき一社で担ってもおかしくないほどのボリュームで、それぞれに専門性が求められます。それくらい高度な技術が必要とされるなかでも、「確実と量産」という意識を全スタッフで共有することで、無駄のないものづくりを極めようとするのがカネエム工業さんです。
自慢の社員と挑む、無限の可能性!
そんなものづくりを極めるカネエム工業さんとは、どんなキャラクターをもった会社なのか。北村さんに「カネエム工業さんのユニークだと思うポイント」を伺ってみました!
まずお話ししてくださったのは、カネエム工業さんを支える社員のみなさんについて。北村さんが数年前に入社したときに驚いたのが、いつも礼儀正しく、お客様をお迎えした時には明るくあいさつをする社員さんたちの姿だったそうです。それは、一般の方向けのオープンファクトリーイベントの際、お客様から「カネエムさんの社員さんの挨拶は気持ちがいいね」とお褒めの言葉をいただくほどの徹底ぶり。「積極・堅実」という社是が文化として根付いているのを日々感じているといいます。
そんな風にいつも誠実に仕事に向き合う社員のみなさんが手がける、カネエム工業さんのものづくり。そのユニークさは、なんといっても無限の可能性を秘めていることなんだとか!カネエム工業さんでは金属プレスの技術に刻印や塗装を掛け合わせることで、金属のボタンやリベッットならなんでもつくれてしまいます。パーツを形づくるための金型も自社で製造しているので、変わった形にも挑戦でき、お客様の理想に柔軟に対応します。服のパーツはあくまでデザインの一部ですが、「そこにこだわりを光らせたい」というつくり手の思いを引き継ぎ、実現させるのがカネエム工業さんのお仕事なのです。
八尾を盛り上げるひと
カネエム工業さんの歩みや、会社としての個性について聞いてきたところで、気になるのは今回お話を聞かせてくださった北村さんご自身について。そんな想いはこの連載の定番質問「八尾に対する想いや、好きなところは?」という問いを通して、晴れていきました!
実は北村さんは八尾市のご出身。地元で通った小学校の楽しかった思い出のせいか、八尾のまちには思い入れがあるのだとか。大学・大学院時代にはまちづくりに興味を持って学んでいたこともあり、カネエム工業への入社と同時に「八尾でなにかやりたい!」と考えていたそうです。そんな矢先に出会ったのが八尾市を中心としたオープンファクトリーイベント「FactorISM」。イベントの存在を知ったのは、第一回「FactorISM」の開催1ヶ月前でしたが、「これだ!」と思い急遽参加を決めたといいます。それから毎年「FactorISM」への参加を続け、今では事務局メンバーとして運営側の役割も担っている北村さん。多くの人に自分たちの会社を知ってもらうために、「小さな会社が群になることで生まれる、大きな力」を大切にしていきたいのだといいます。
FactorISMでは、実行委員会のメンバーで結成したロックバンド「みせるばんど」での活動や、近隣の参加企業と協業して新しいコンテンツを生みだす「八尾北連合」での取り組みを主宰するなど、積極的にイベントを引っ張ってくださっている存在です。
そんな八尾での活動をベースに、北村さんがいま目指しているのは世界の舞台。念願だった関西万博への出展も、八尾市のリーボンチャレンジの参加企業として果たされる予定です。八尾に根ざし、世界を目指すキーパーソンから次はどんな活動が生まれていくのか、お話をきいていてワクワクしてきました!
伝統の技術で新しい価値を
いまカネエム工業さんでは、アパレル業界とは異なる分野での技術の活用や、自社製造のボタンを使ったアイテムの企画など新しい挑戦が進められています。「プレス加工という共通項から薄い連続性を見い出しながら新たな事業の柱をつくっていきたい」と語る北村さん。
自身が入社した際に立ち上げた若手メンバーで自社の技術を活用した商品開発を試みるプロジェクトでは、実際にボタンの機構を生かしたキーケースを完成させ、先日購入型クラウドファンディングで発売を迎えました!
その名も『鍵留』。本革のケースにカネエム工業自慢のボタンを使って鍵を取り付けることで、いつでも簡単に取り外し、その時に必要な鍵だけをケースに入れて持ち歩けるという今までにないキーケースです。
ボタンで簡単に鍵が取り外しできることは様々なシーンで便利ですが、予期せぬタイミングで外れてしまっては鍵を失くす原因になってしまいます。『鍵留』は一般的なボタンではなく、何度も実験を繰り返すことで生まれたカネエム工業さんならではの程よい着脱強度のボタンを使用することで実現したこれまでにないキーケースなのです。
このキーケースは、京都芸術大学の学生さんと共に立ち上げた「…TOME」というブランドを掲げたアイテム。カネエム工業さんは「無限につくれる」という強みを生かし、社外との協業を大切にすることで新たな価値を生み出そうとされています。
お客様が「カネエムに頼む意味」を見出せるようなものづくりをしていきたいという北村さん。「ただ続く会社になるだけでなく、どうせやるなら、世界中にインパクトをとどけたい」と熱い意気込みを語ってくださいました。
おわりに
本文でもご紹介したように、北村さんは「FactorISM」の若手メンバーを代表するキーパーソンのひとりです。昨年は「FactorISM」参加一年目だったCyanにとっても、前に立って色んなことを教えてくれた頼りになるお兄さんのような存在でした!
いつも優しく声をかけてくれる北村さんですが、今回改めて会社のことを深く伺ってみて、カネエム工業さんの全体像をより鮮明に捉えることができました!カネエム工業さんが手がけるのは、「ものづくりを支えるものづくり」。唯一無二のパーツを形にすることで、私たちが身につける服に華を添えてくれる、とてもかっこいいお仕事だと感じました!次にお気に入りのジーンズを取り出すときは、ボタンやリベットまで見つめてしまいそうです。
最後に特別にご案内いただいたカネエム工業さんの工場を写真でご紹介します!
創業期に開発した板材からつくる鋲は、いまでも製造が続けられています!
こちらは、「表面処理」と呼ばれる磨きや着色の現場。同じ工場の中でも、部門によって全く雰囲気が違います。
この工程が一番「職人」的な技術が求められる現場だといいます。着色するための溶剤を入れるタイミングや量、釜を回転させる速さなど、的確な判断が求められます!
着色の手法や、使用する溶剤によって同じボタンでも違った輝きを放ちます。こんな風に比べて見せてくださいました!
またカネエム工業さんは、メッキを使用せず化学薬品を適切に用いることで環境に配慮した加工を得意とされています。小さなパーツを生み出す現場には繊細な技術や心遣いがたくさん詰まっているようでした!
カネエム工業さんのこうばにお邪魔してみて、やはり印象的だったのは、ガチャンガチャンと一定のリズムを刻むプレス機の音!「みせるばんど」を率いるロックンロール男子北村さんが、思わずギターを弾きたくなるのも納得です!
北村さんがプレス機の音に合わせてギターを弾く動画はユーチューブにてご覧いただけます!
もちろん、「みせるばんど」のかっこいいミュージックビデオも!
この記事を読んでくださったみなさんはぜひこちらもチェックしてみてくださいね!
「みせるばんど」の曲をエンドソングに「気になる八尾のあの工場 vol.7」は閉幕です。
北村さん、今回はお話を聞かせてくださってありがとうございました!
実は友安製作所のオリジナルアウトドアアイテム「シェラカップハンドルカバー」は、カネエム工業さんにつくっていただいたボタンを使用しています!
友安製作所のハウスロゴが入ったかわいいボタンが、ワンポイントになっているレザーハンドルカバーです。
カネエム工業 株式会社
1947年創業の、アパレル・生活関連業界の副資材メーカー。服や靴の一部となる、ボタンや留め具を製造されています。【カネエム工業さんHP】http://www.kanem.com/