世界各地の展示会を視察している友安製作所では、2025年4月7日~13日にミラノの市街地で開催されたデザインイベント「フォーリサローネ(Fuorisalone)2025」にも行ってきました!
リアルにたくさんの展示を視察してきたバイヤーAliceに、ルイ・ヴィトンや無印良品など注目展示の様子や現地の熱気について語っていただきました。
目次
フォーリサローネ(Fuorisalone)とは?
フォーリサローネは、世界最大の家具見本市『ミラノサローネ国際家具見本市』と同時期に、ミラノ市街で開催されるデザインの祭典です。
ミラノサローネは、市街地から数駅離れた会場で開催されますが、フォーリサローネはミラノの市街地が舞台。Fuorisalone=「展示会の外」の意味だそうです。
街のいたるところでショールームやギャラリー、美術館、イベント会場での展示があり、ハイブランドから小さなメーカーまで、公式のガイドブックに記載されているものだけでも1000を超える出展があったようです。
これらミラノサローネとフォーリサローネの2つを呼称して、ミラノデザインウィークと呼ばれています。
フォーリサローネ2025のテーマは?
フォーリサローネ2025の全体テーマは「Mondi Connessi(つながる世界)」です。
参加型かつ生成的なデザインを通じて、自然環境から先端技術、文化的伝統から未来の革新まで、さまざまな側面を「結びつける」ことを目指しています。
テーマ自体は、「ちょっと抽象的でわかりにくい」と感じるかもしれんが、出展しているブランドは皆さんが一度は耳にしたことがるようなブランドも多く、デザイン関係者以外の方にとっても刺激的で魅力的な展示が集まっていました。
バイヤーが注目したブランド展示
バイヤーAliceたちが注目したブランド展示、見学して印象に残った展示をピックアップしました。
なかには、たまたま立ち寄って発見した展示もあり、実際に足を運ぶ機会の大切さも感じたフォーリサローネだったようです。
① Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)

ルイ・ヴィトンの展示は、ブランド初となる「ホーム・コレクション」の発表が大きな注目を集めていました。
展示の舞台となったのは、18世紀後半の新古典主義の宮殿パラッツォ・セルベッローニ(Palazzo Serbelloni)。
Alice「ヴィトンの展示はもちろんですが、この宮殿の装飾を生で体感できたことも大きな魅力でしたね。ヴィトンの世界観に引き込まれて、ため息が出るほどでした」

今回の展示では、ヴィトンの原点ともいえるトランクや、2012年から世界で活躍するデザイナーたちを機用して展開する「オブジェ・ノマド」の作品も多数展示してありました。
上の写真は、さまざまなモノグラムデザインのアイテムたち。
Alice「モノグラムではないアイテムにも、椅子の背面や食器類、ナプキンリングなど細かなものまで、すべてヴィトンのマークが付いていました」。
宮殿の2階に上がると第二展示スペースに。螺旋階段を上がるとすぐに、「オブジェ・ノマド」の看板が目に入り、同じ柄の絨毯と壁紙で覆われた展示スペースが広がっていました。
そこには、下の写真のような人魚がモチーフになったユニークなテーブルサッカーゲームも。
Alice「サッカーゲームは、波を表現したと思われる水色の革で覆われて、脚は鱗状のデザイン、中にはサッカー選手の代わりに人魚が。ユニークで可愛い作品でした」

Alice「オブジェ・ノマドの展示スペースでは、わざわざ壁を立てて壁紙や同じカラーの絨毯のなどでその作品に合った空間を創造していました。反対にラグジュアリーなホームコレクションの方は、宮殿の壁や装飾をそのまま生かしたディスプレイで、ヴィトンの世界観を完璧につくり上げていました。個人的にも一番印象的な展示でしたね」。

下の写真も、オブジェ・ノマドの作品。繭のような形のチェアは、オブジェ・ノマドの象徴的な存在である「コクーンチェア」の新バージョンだそうです。

また、宮殿の外には、20世紀を代表するフランス人建築家・デザイナー、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)へのオマージュとして、彼女が1934年に提案した「水辺の家」を再現したミニマムな一軒家が展示されていました(下の写真)。
水辺の家 雨水を溜めるシステム
ルイ・ヴィトンの展示写真は記事の最後にも掲載しています。
② Casa Cork 「Cork Collective」

約6メートルにも及ぶ巨大なコルクの木が中心展示となっていたCasa Cork。
サステナブルな素材であるコルクの可能性を探求した没入型空間をつくり上げていました。
Alice「会場の表まで人だかりができていた人気の展示。巨大なコルクの木は、本物のコルクの木を3Dプリンターで再現したものだそうです。なんと、目に映るものほとんどがコルクでできているんです!私たちはたまたま立ち寄ったのですが、その中でも群を抜いて印象的でユニークでしたね」。

椅子やソファ、机、壁、照明のシェード、床、バーカウンター、さらにバーテンダーのエプロンまでコルクでつくられています。
「Fuorisalone Award 2025」サステナビリティ部門で特別賞を受賞しています。
③ 無印良品「THE MUJI MUJI」

日本でも人気の高い無印良品もフォーリサローネに出展していました。
『MUJI MUJI 5・5』と題した展示は、限られたコンパクトなスペースで完結する持続可能な生活を実現するタイニーハウス(小さな家)。
畳の部屋、玄関、台所、お風呂場、金継ぎのアトリエスペース、庭という6つのモジュールから構成された日本の伝統的な生活スタイルになっています。
こちらをデザインしたのは、フランスのデザイナーユニットStudio 5•5。このモジュールは、住む人によって自由に組み合わせられるようになっています。
Alice「公園の中に展示されていて、小さな家ひとつで生活が完結するようにつくられていました。庭には、無印良品の商品で見かけるようなプラスチックのケースが反対向きに置かれていて、ベンチに使われていましたよ」
「Fuorisalone Award 2025」で特別賞を受賞しています。
④ SELETTI(セレッティ)「HOTEL Voyeur」
SELETTIは遊び心あるデザインが注目されているイタリアのデザインブランド。
今回のフォーリサローネ2025の展示は、アメリカ人アーティストのトレイシー・スネリング(Tracey Snelling)との初コラボレーションによる「Hotel Voyeur」です。
Hotelの名で分かるように、展示会場の表にはホテルの外観を模した巨大な展示物が!
HOTELの表示がネオンになっており、6つの扉からいろいろな部屋の“のぞき見”ができるような没入型のスタイルになっていました。
Alice「さらに会場の中に入ると、心臓をリアルに形にしたオブジェなど、かなりインパクトのある雑貨や照明、家具が至る所にディスプレイされていて、とにかくカラフル! 好みが分かれると思いますが、こういったスタイルが好きな人は、トータルコーディネートしたくなるような面白い展示でした。また、展示会場の外では、この展示のアーティストにサインをもらっている来場者もいましたよ!」
こちらも「Fuorisalone Award 2025」で特別賞を受賞しています。
⑤ Terrae「光と物質の対話」
トワル・ド・ジュイ柄の陶板
こちらはイタリアのセラミックブランドMirageと建築スタジオAMDL CIRCLEが共同で発表した展示で、たくさんの内外装用タイルや陶板が展示されていました。
セラミック素材が光を受けて変化する様子を表現した展示で、実際に展示空間では計算された照明でセラミックに光を当てていました。
Alice「タイルの色も可愛く、陶板は木目やToile de Jouy(トワル・ド・ジュイ)の柄もあり、全体的にとてもおしゃれでしたね。今年のトレンドカラーと組み合わせたボードの展示も可愛くて、日本でも受けそうなカラーが多かった印象です」
2025年のトレンドカラーはモカ・ムース トレンドカラーとの組み合わせ
⑥ ポルタヌオーヴァ・バーティカル・コネクション

ポルタヌオーヴァ・バーティカル・コネクションは、2025年のフォーリサローネのテーマ「つながる世界」を表現したインスタレーションです。
インスタレーションとは、特定の空間にオブジェや装置を展示して、その空間全体を作品として鑑賞者に“体感”してもらう現代芸術の表現手法。
特にこちらの展示では、装置の中を鑑賞者が歩行可能な立体展示になっていました。
鑑賞者はAIのガイドに従いながら演出を楽しむという新しい試みが印象的で、建築と自然、テクノロジーを融合した展示でした。
Alice「フォーリサローネの目玉展示の一つで、最後には植物の苗をもらうこともできましたが、日本には持って帰ることが難しいので断念…。
イタリアは都市部でもビルの間にたくさんの緑があって、この展示会場からも緑化された高層ビルを見ることができ、自然と共生する意識の高さを感じました」
ハイブランドの展示
フォーリサローネ2025には、認知度の高いハイブランドもたくさん出展していました。
ブランドによって全く異なる世界観の展示が広がり、次に紹介する3ブランドを比べただけでも面白い発見がありました。
Hermès(エルメス)
真っ白な展示空間に、幾何学的なボックスが吊り下げられているミニマムで不思議な空間。
ボックス内の照明だけでなく、ボックスの下にもカラフルな光の輪が投影されていました。
Alice「それぞれのボックスの中にエルメスのホームコレクションの食器やラグが展示されていました。舞台美術のアーティストとコラボしているようで、照明などは舞台を連想させるようなもの。全体的にとてもアーティスティックな空間で、非日常の没入感を味わうことができました」
入り口の広い空間や展示スペースにも様々な大きさの窓があり、隣のスペースが見えるような設計に。
訪れた鑑賞者同士が鑑賞し合っているような状況が他にはないユニークさでした(下の写真)。
展示スペースの窓もポイント 照明でフレームを表現
SAINT LAURENT(サンローラン)
1950年代にデザインされたアームチェア 開放感ある空間
サンローランの展示は、メイン地区から少し離れた場所にある工場跡のような建物で開催されていました。
展示内容は、ソファや本棚、アームチェアなどの家具なのですが、これらが20世紀を代表するフランス人建築家・デザイナー、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)の未発表作品を復刻したものだそうです。
Alice「広大な面積の建物の中に、斬新なデザインの家具が展示されていました。こちらもフォーリサローネの目玉展示の一つのようで、中心地から距離があるにもかかわらず、予想より多くの来場者がありましたね。シャルロット・ペリアンのファンには必見の展示だったと思います」。
シャルロット・ペリアンに関しては、ルイ・ヴィトンでも「水辺の家」として、彼女が1934年に提案した小さな週末用住宅のプロジェクトを再現していました。
GUCCI (グッチ)
グッチの展示は、「Gucci | Bamboo Encounters」と題して、竹を使ったさまざまなアイテムを提案していました。
竹はご存じのようにグッチのバックの持ち手やバックルのつまみに使われることも多く、ブランドを象徴するような素材。その素材をテーマに展示を構成していました。
Alice「教会の回廊と中庭を使った展示で、展示のアイテムとしては、竹を使ったバスケットや凧などバリエーションに富んでいました」
フォーリサローネ2025:まとめ

とにかく数が多いフォーリサローネの展示。今回残念ながら足を運ぶことができなかった展示もありましたが、フォーリサローネの賞を受賞した無印良品やCasa Corkは、受賞も納得の魅力的な展示だったようです。
Alice「私が最も印象的だったのは、ルイ・ヴィトンの展示。初のホームコレクションのお披露目は、宮殿の装飾も含めて普段見ることのない豪華さで、本当に行って良かったと感じました。フォーリサローネ全体としては、とにかく街中にアートな展示がたくさん!予約制のところも多く、人気のところは2~3時間待ちの展示もありました。来年は行ってみたいという方であれば、 事前に行きたいところや気になるところをチェックして、ある程度計画を立てていくのがおすすめです」
友安製作所では、引き続き世界各国の展示会を視察してトレンドをいち早くキャッチし、商品開発にもどんどん活かしていきたいと思います。このトモヤスタイムズでも、随時レポートを発信していきますので、ぜひチャックしてくださいね。