ミラノサローネ2025・リアルな現地レポート

世界中のインテリア関係者が集まる、年に一度の世界的なインテリア見本市「ミラノサローネ」
2025年も友安製作所のメンバーは現地ミラノの熱気を肌で感じてきました。現地に訪れたからこそ伝えられるリアルな感想や、心が動いた展示、プロ目線で見た今年のトレンドまで、たっぷりレポートします。

この人に聞きました!

バイヤーAlice

商品企画・バイヤー:Alice(アリス)
友安製作所のさまざまな商品を企画したり、バイヤーとして国内外に買い付けに行ったりと、商品やトレンドに関するプロフェッショナル。

ミラノサローネとは?2025年の注目ポイント

ミラノサローネ(正式名称:Salone del Mobile.Milano)は、イタリア・ミラノで毎年開催される世界最大級のインテリア&デザインの祭典。ソファやテーブルといった家具はもちろん、照明、テキスタイル、キッチン、最新のライフスタイル提案まで、とにかく“インテリアのすべて”がここに集まります。
イベント内容は、家具を中心とした「サローネ国際家具見本市」に加えて、キッチン・バスのカテゴリーと照明のカテゴリーが1年ごと交互に展示されます。
そして、今年2025年は「照明」の年エウロルーチェ(サローネ国際照明見本市 / 奇数年開催)として2025年4月8日~13日まで開催されました。

今年は、エウロルーチェ2023と並ぶ、302,548人の来場者を記録し、海外からの業界関係者の来場が過去最高の68%。出展数も37カ国から2,103と大盛況だったようです。

バイヤーAlice

プロとしても毎年チェックせずにはいられない、インテリア業界の“最前線”。新作やトレンド発信の場として、世界中のブランド・バイヤー・デザイナーが注目している一大イベントです。

デザインだけでなく“心地良さ”も

2025年のテーマは、“Thought for Humans(人のための思考)”。
素材やテクノロジーを“人の心地よさ”にどう結びつけるかが大きな焦点だったようです。友安製作所のバイヤーAliceが感じたポイントは次の3つ。

近年の必須テーマ「サステナビリティ」
近年は世界中の見本市でサステナブルが欠かせないキーワード。素材リサイクル、バイオプラスチックを用いたアイテム、自然素材が目立ちました。
クラフトマンシップ
ミラノサローネ・サテリテと呼ばれる35歳以下の若手アーティストを集めた公式イベントでは、「NEW CRAFTSMANSHIP: A NEW WORLD(新しいクラフトマンシップ:新しい世界)」というテーマで、職人の手仕事を再評価した展示が行われていました。
他の展示でも、職人の技が不可欠な家具など、見ごたえのある展示が多い印象でした。
体感できるインテリア
ミラノ市街で行われている「フォーリサローネ」でもそうでしたが、単に見るだけでなく“体感”できる展示が目立った印象でした。

バイヤーAlice

デザインだけでなく、“心地良さ”を重視した展示が多かったですね。私はミラノサローネは初めてだったんですが、フォーリサローネと同じく、人気のブースは並ばないと入れないほどの来場者でした。
クラフトマンシップが見直されている展示では、ものづくりが原点である友安製作所と通ずるところがありましたね。

予約困難だった映画監督パオロ・ソレンティーノのイベント

次の項目からは、実際の会場の空気感や、気になった展示を写真たっぷりでお届けします!

バイヤーが注目したブランド:家具

とにかく会場が広いので、もし皆さんが来場されるのであれば、興味のあるブースをあらかじめピックアップして、効率的に回るのがおすすめ。写真のフロアマップは、赤色が家具、黄色が照明と分かれていましたが、赤フロアでも照明が展示してあったりと明確に区分けをしているわけでないようです。
写真では左側下の赤フロア15・13番のフロアがラグジュアリーブース。手前から順に見ていくと一周できる構造になっていました。

超人気のラグジュアリーなインテリアブランド

edra(エドラ)

edraは、1987年にイタリア・トスカーナで誕生したラグジュアリー家具ブランド
“アートピース”と呼ばれ、公共施設や美術館にも多数収蔵されるほど芸術的な家具たちは、世界中にファンが多いと言います。
そんなedraの展示は、革新的で刺激的。クルクルと映像が変わる巨大なLEDウォールと、フルレングスミラーを使った演出で、ダークトーンの没入感のある世界を創り上げていました。展示されている家具は、まるでガラスのようなポリカーボネートだけでつくった椅子や、樹脂を糸状に練り上げてつくった椅子など、アイコニックでアート性の高い家具たちが並んでいました。

バイヤーAlice

ラグジュアリーフロアで一番印象的だったのが、こちらのedraのブース。テーマパークに足を踏み入れたような没入感で、「展示会っぽさ」を感じない独特の空間でしたね。

ポリカーボネートでつくられた椅子

Kartell(カルテル)

Kartell(カルテル)は最先端の工業技術で、「プラスチック家具=安価」というイメージを覆し、デザイン性・機能性・耐久性に優れたプロダクトを次々に発表しているイタリア・ミラノ発の世界的インテリアブランドです。
近年はサステナブル素材やリサイクルプラスチック、最新技術を積極的に取り入れ、環境への配慮にも力を入れています。有名デザイナーとのコラボも多く、日常使いからラグジュアリーな空間まで幅広く活躍し、デザイン史に残るような名作も多数生み出していますよ。
今回のミラノサローネでは、未来的な真っ赤な空間を演出。新素材のリサイクルプラスチック製家具や、バイオ素材を使った新モデルも発表していました。

バイヤーAlice

サステナブルなテーマというと、ナチュラルやくすみ系のカラーリングを思い浮かべますが、Kartellは鮮やかなカラーリングや花柄といった遊び心いっぱいの展示で、大人がワクワクするような空間になっていました。

ディティールと上質さに注目したブランド

MOBi(モビ)

脚の曲線が美しいMOBiの椅子

バイヤーAliceが「お手本にしたい!」と思った家具ブランドの一つが、MOBi(モビ)。1983年にトルコ・ブルサで創業された、木工技術に秀でたハイエンド家具ブランドです。クラフトマンシップと厳選された素材がMOBiの強みで、創業者A. Rasit Karaaslanによるデザインは、世界的に評価されているそうです。
写真を見ても分かるように、木工の美しい曲線が印象的な家具ですよね。展示全体的に落ち着いた演出で、ハイブランドながら実際の暮らしが想像できそうな点も好印象でした。

バイヤーAlice

取っ手の形、椅子の脚の曲線や机などデザイン、それに「上質さ」など含めて見本にしたいなと思えるブランドでした。

新作の大理石天板のダイニングテーブルとキャビネットも展示されていました。
木と石の異素材のコラボで、その対比が実に好バランス。 「新しい」とトラディショナルな雰囲気が上手くマッチしていた展示でした。

日本ブランドの活躍にも注目!

アジアのメーカーの出展数は少なく、ほとんどがイタリアを中心としたヨーロッパのメーカー。アウェイな空間でしたが、日本からは世界でも認知度が高いメーカーが数社出展し、注目されていました。

隈研吾×Gandia Blasco

世界的建築家の隈研吾氏がGandia Blascoとコラボしたアイテムも展示されていました。
メインはアウトドア家具のライン「HOS」で、再生PET繊維のテキスタイルや、寺院のような木枠が特徴的な展示でした。木枠にテキスタイルが吊るされた演出で、隈研吾氏の独自の世界観が表現されていましたね。

カリモク(Karimoku)

インテリア好きならご存じの方も多い、日本を代表する木製家具メーカー・カリモク(Karimoku)も出展していました。
カリモクは1940年に創業以来、こだわりの国産材や緻密な加工技術といった職人技を現代のデザインと融合し、暮らしに寄り添った家具をつくり続けています。
最近では、建築家やデザイナーとのコラボで世界的な評価も獲得しているそうです。

今年のミラノサローネでのテーマは、「A Sense of Serenity(静けさの感覚)」。禅を思わせるような静けさを演出した展示が印象的でした。ちなみに、展示の壁は手塗りの漆喰だそうです。

NAGANO INTERIOR(ナガノインテリア)

イタリア人デザイナーの新作も展示

創業79年を迎える福岡の木製家具ブランド、NAGANO INTERIORも、日本ブランドとして人気エリアに出展していました。NAGANO INTERIORは、すべて日本国内の自社工場で生産し、厳選された無垢材を丁寧に手作業で仕上げています。

昨年も出展されていたようで、その際、多機能で軽く、人間工学に基づいたスツール「COUPÈ(コッペ)」が注目され、今年は新しい素材である楠(クス)を使った新バージョンも展開していました。

写真のスツールは人気のCOUPÈ

バイヤーが注目したブランド:照明

照明フロアは、華やかなシャンデリアタイプの照明が多く、人よりも大きいヴェネチアンガラスでできたシャンデリアなどゴージャスなものがメイン。宮殿やお城にあるような照明が多かったため、実際の暮らしにマッチしそうなデザインのブースには、自然と目が留まりました。

日常に取り入れる非日常:Moooi(ムーイ)

照明エリアでバイヤーAliceが注目したのは、「Moooi(ムーイ)」というブランド。
「日常に非日常を」というテーマで遊び心のある照明や家具をつくり上げているMoooiは、2001年に創業したオランダのインテリアブランドです。

バイヤーAlice

芸術的なものから、スッキリとしたモダンなものまで幅広いデザインがそろっていて、日本の暮らしの中にも取り入れやすいデザインが注目した理由です。なかでも、一見花びらのようにも見えるペンダントライトは、ユニークな形状で印象に残っています。

ゴージャスなシャンデリアからガーデン用まで

巨大と言っていいほど大きなシャンデリア。ホテルやホールなど、公共施設に使用されるものだと思いますが、こんなに間近で見られる機会はなかなかないですよね。これも世界的な見本市ならでは。

薄く削った大理石をシェードにした照明
イタリアは大理石の主要な産出国であり、加工技術も高いことで知られているそうです。その素材と技術を活かした照明というわけですね。

展示会場の中につくられたガーデンブース。ところどころにガーデン用の照明が灯され、ここだけがアウトドアの別世界のようにつくり込まれていました。

ミラノサローネで感じたトレンドとは?

トレンドカラーはインテリア向けにアレンジ

2025年のトレンドカラーは「癒し」や「安心感」を求めるムードから選ばれた「モカムース(Mocha Mousse)」と、サステナビリティや自然回帰志向の高まりから選ばれた「ホライゾングリーン(Horizon Green)」。
どちらもあたたかみのあるアースカラーですが、今回ミラノサローネでバイヤーAliceが目にしたこれらのカラーは、ちょっと違っていたようです。

バイヤーAlice

トレンドカラーのモカムースよりも、もう少しオレンジっぽい、くすみサーモンオレンジのようなカラーが目立っていたように感じました。また、グリーンも多用されていたんですが、ホライゾングリーンよりもモスグリーンのようなくすみがあるカラーが多かったですね。
トレンドカラーもそのまま使うというより、インテリア業界では、より癒されるようなカラーにアレンジして使われている印象でしたね。

これらもトレンドのモカムースのイメージでしたが、オレンジが強い印象でした。下のPANTONEのモカムースよりも癒しのあるカラーですよね。
さすがにトレンドカラーということもあって、アレンジしつつも会場のいたるところで、こういったモカムースとホライゾングリーンのアイテムが見られました。

出典:PANTONE
出典:JAFCA

リアルグリーンを使った展示がイタリアならでは

展示の中で目立っていたのが、グリーン(植物)。なかには、まるでジャングルくらいのボリュームで植物が大量に使われているブースもありました。そして、驚くことにそれがほとんど“本物のグリーン”だということ。
どんな大きな木も、足元の草花も、すべて本物!ドイツやフランスの展示会ではフェイクグリーンがメインだったために、バイヤーAliceもその徹底ぶりに驚いたようです。

バイヤーAlice

あるブースには、本物のレモンの実も実っていました! リアルな植物はミラノサローネだけでなく、ミラノの街中にもあふれていて、イタリアらしい素敵な特徴だなと感じました。

“モコモコ素材”が引き続き人気!

世界的なインテリア見本市『imm cologne – The interior business event(ケルン国際家具インテリア見本市。以下、imm)』でも多く見られた、モコモコ素材がミラノサローネでも人気でした。
こちらの素材は、モコモコふわふわとした素材感が魅力の「ブークレ生地」。ソファや椅子、クッションカバーなどのファブリックにも使われていました。ブークレ生地は、さまざまな見本市で見かける上に、現在日本でも人気の素材ですよね。この人気は今年も続いていきそうです。
上の写真のソファは、モコモコ素材とトレンドカラーのホライゾングリーンを掛け合わせて、トレンドを詰め込んだアイテムでした。

ミラノサローネ:まとめ

ミラノ市街で開催されているフォーリサローネ同様に、出展数も来場者数も多いミラノサローネ。世界のさまざまな見本市に足を運んでいるバイヤーAliceも、その盛況ぶりに驚いたようです。日本からの来場者も多いようで、約2,610名の業界関係者が参加されていました。
もともと、ドイツの「imm 」を見た人が、イタリアでもこういった見本市を!と立ち上げたのがミラノサローネの起源のようです。それが今では、私たちが視察していても、immよりもミラノサローネの方が断然賑わっていると感じました。

バイヤーAlice

一流のインテリアを肌で感じたり、トレンドを知りたいのなら、ミラノサローネが一番適しているなと感じた視察でした。また、デザインだけでなく、品質やクラフトマンシップなど、一流ブランドが妥協なく取り組んだ結果を体感できたのは貴重な経験でしたね。友安製作所の商品企画にも活かしていきたいと思います。


ミラノサローネ:ギャラリー