「interview生きるをあそぶ人」は、友安製作所のスローガン『生きるをあそぶ』をもとに、自分らしく人生を楽しんでいる人にお話を伺うインタビューシリーズです。
連載第10回は、編集部が地元関西を飛び出した「出張スペシャル」。緑豊かな山あいのまち、神奈川県・藤野にある手づくりの村「バグソン」の村長、中村真広さんにお話をきく後編です。
「バグソン」と名付けられたその場所には、すべてをお金で消費する都会のくらしから離れ、自分たちの手でくらしを耕す、手触りのある営みが広がっていました。前編では「拡張家族」や家賃を定めない「感謝経済」など、村づくりの実践について伺いました。
後編は、中村さんと「生きるをあそぶ」ことについてさらに深める時間に。仕事とくらしの境界線を軽やかに飛び越え、街の仲間たちと新たな企みを広げていく中村さんのこれからについても、たっぷりとお話をうかがっています。
カタチにとらわれない、バグソンという家
離れや長屋、庭や森までがひとつのくらしの場となっているバグソン。中村さんご自身がくらす「母屋」もまた、一見プライベートな住まいに見えて、ここにも中村さん流の場づくりの思想が映し出されています。
仕切りのない大きな一室空間に、バーカウンターも備えたホールのような造りのお家。
「家族を前提に家をつくると、子どもが育って巣立ったあとの『賞味期限』が短いんですよね。だから母屋は、家族のためだけの箱ではなく、誰もが集まれる場所にしました。たまたま今、僕ら家族がそこにくらしているという感覚なんです」
奥のスペースは将来的に仕切って客室にもできるように工夫されており、家族の成長や変化に合わせて柔軟に姿を変えていけるようになっています。

そして中村さんにとって「家」とは、やはり母屋だけでなくバグソン全体のこと。週末になれば長屋の住人やご近所さんがふらりと庭に集まって焚き火をし、少し出かけている間は長屋の若者が子どもたちとプールで遊んでくれる。そんな温かな繋がりが日常の景色です。
実は、そんな空間づくりに友安製作所のアイテムも一役買っていました。離れのバスルームに取り付けられたカフェ風のサインプレートや、仲間とワイワイ塗り上げたというスーパーカブのペイント。

「塗料やサインなど、『これいいな』と直感で選んだものが偶然友安製作所の箱で届くことが何度もあったんです」と笑う中村さん。自分たちの手で心地よい空間をDIYし、くらしを育んでいく楽しさがここにも息づいていました。
仕事もくらしも、地続きに
藤野に移住してからの中村さんの1日は、実にしなやかです。
朝は子どもたちを車で学校へ送り届け、犬の散歩を済ませてから仕事モードへ。夕方5時からは家族と一緒に過ごす「ファミリータイム」を取り、子どもたちが寝静まった後に再び机に向かう。自然に囲まれながら、自分のリズムで心地よく過ごす日常がそこにあります。
けれど移住後しばらくは、ご自身の中で生き方のバランスに違和感があったといいます。
「僕の中には、バグソンでのくらしの表現と、藤野でのゆるやかな地域経済活動、そして移住後も東京をベースにしていたスタートアップビジネスという3つの生き方のレイヤーがあります。その中で、スタートアップビジネスだけがずっと浮いている感覚でした。里山にいてローカルな経済活動をするのは自由で楽しかったけれど、東京との仕事だけがどこか切り離されている感覚があって」
そのモヤモヤが一気に晴れたきっかけが、地域で愛される企業(ラブドカンパニー)を支援し、共に歩んでいくという新たな事業への挑戦でした。
「地域に根差す企業を支える仕事なら、これまでのビジネスの経験も、この場所でのくらしやローカルな経済活動も、すべてが地続きになる。ようやく自分の中で生き方がひとつに統合された気がしたんです」
その軸が明確になった中村さんは、東京にあった会社の登記を藤野へと移し、東京のオフィスも引き払いました。今では東京のチームメンバーも「藤野集合!」と定期的にこの場所に集まり、地域にしっかりと根を張って活動を続けています。

あそびの原点は、理屈抜きの「衝動」から
仕事もくらしも、境目なく楽しんでいるようにみえる中村さんに、今回のテーマであり友安製作所のスローガンでもある「生きるをあそぶ」という言葉を改めて投げかけてみました。
「『生きるをあそんでる人』と言ってもらえたの、すごく嬉しかったんです。まさにそうだなと思って」と笑顔で答えてくれた中村さん。中村さんにとって「あそび」とは、理屈や損得を超えた「衝動」そのものです。
「子どもって、『やりたい!』という直感や衝動のままにあそびますよね。大人になるとつい理由や成果を求めてフタをしてしまいますが、もっと自分の内側から湧き出る衝動に素直になっていいと思うんです」
今の藤野には、そんな「趣味以上・仕事未満」の活動を心から楽しんでいる人が多いのだそう。その自由で熱量のある姿に刺激を受け、中村さん自身も10代の頃に没頭していた音楽活動を再開しました。
損得勘定ではなく、純粋な衝動から生まれたものは、人の心を動かして自然と周りの共感を生んでいく。理屈を超えた「あそび」の熱量が、人や街を惹きつける大きな原動力になっています。

仲間たちを主人公に。「衝動」の輪郭を描いてゆく
中村さん自身の直感や衝動から動きはじめたバグソンの試みも、次第に周りの人々に波及し、地域の仲間たちを巻き込んだ新たな企みへと繋がりを見せています。
それは中村さんにとって、仲間の内側にある「衝動に輪郭を与える」ことなのだとか。
実際に電車の運転士だった友人が「もっと地元のことがしたいんだ」と漏らした時、「じゃあやろうよ!」と背中を押し、共に会社を立ち上げてカフェの起業をサポートしたこともありました。

「本気であそんでいれば、それが自然と仕事やライフワークになっていくと思うんです。衝動さえあれば、あとは勝手に広がっていく。自分が主役になるのではなく、周りの人たちが自分らしく生きるきっかけや場所をつくっていきたいんですよね」
かつてビジネスの最前線を駆け抜けた中村さんがいま目指しているのは、関わる仲間や街の企みを支え、共に面白がっていく未来です。
資本主義のスピードから一度立ち止まり、自分の手でくらしを耕すことで、仲間と共に「生きるをあそぶ」。中村さんが藤野の里山で育んでいるのは、誰にとってもどこか懐かしく、そして新しい、これからの豊かな生き方のあり方なのかもしれません。
今回で記念すべき10回目を迎えた、インタビュー連載「生きるをあそぶ人」。これからもさまざまな方との交流を通して、読者のみなさまと一緒に「生きるをあそぶ」を深めていけるよう、取材をつづけます。次回はどんな「生きるをあそぶ人」に出会えるのか、私たちも楽しみにしています。












