interview 生きるをあそぶ人 vol.5 / 届けたいのは、いつでも木に触れられる暮らし

「interview生きるをあそぶ人」は、友安製作所のスローガン『生きるをあそぶ』をもとに、自分らしく人生を楽しんでいる人にお話を伺うインタビューシリーズです。
第5回は、“木と共にある暮らし”に惚れ込み、天然木の家づくりや、木製雑貨を手がける居藏さん。あなたにとって、自分らしい人生とは?

居藏宏幸さんのプロフィール

国産の天然木にこだわった家づくりを手がける工務店「藏家」と、オーダーメイドの木製家具やキッチン、木製の日用品などを製造・販売する「藏堂」を営む。

木という素材と出会って

5人目の「生きるをあそぶ人」にお会いするべく向かったのは、大阪府松原市の住宅街の中に佇む木工の作業場。「やりたいことしかやってないです」と言い切る居藏さんが営むのは、「木」と「暮らし」を繋ぐ2つの会社です。国産の天然木にこだわった家づくりやマンションリノベーションを手がける工務店「藏家」と、オーダーメイドの木製家具や、キッチン、木製の日用品などを製造・販売する「藏堂」。学生時代から建築やものづくりに携わり、木と共にある暮らしに惚れ込んだ居藏さんの現在地です。

今回の生きるをあそぶ人 居藏さん

居藏さんが大切にしてきたのは、自らの手を動かすことと、直感的な感覚。大学卒業後はリノベーション会社で設計の仕事に就きますが、「家づくりそのものを知らなければ」と大工の職業訓練校に通いなおし、その後は現場監督の道へ。机を離れて現場に触れることで、身体に家づくりを染み込ませてきました。しかし住宅メーカーで働いていた頃は、「自分の建てた家を好きになれない」という葛藤があったといいます。

そんな時に出会ったのが、国産材を使った木の家づくりをする工務店でした。「その工務店が建てた家を見た時、自分がここに住みたい!給料はなんぼでもいいからこの会社で働きたい!と思ったんですよ」。木という素材との出会いが、居藏さんのターニングポイントになりました。

住宅メーカーで働いていたとはいえ、天然木の家づくりは未知の世界。これまでやってきた仕事との違いに衝撃を受けたといいます。そして、すっかり木に魅了された居藏さんは、現場での学びを重ね、2010年に「藏家」として独立。天然木の家づくりに、一対一で向き合いはじめます。

藏家が手がけた木のお家

日々たくさんの木に触れ、実際にお客様のお家を手がけていくなかで、居藏さんの「木の良さを知って欲しい」という思いはどんどん強くなり、「木の家を建てた人は自分の家で触れるけど、そうでない人にも木に触れて欲しい」とさえ思うように。それが「藏堂」での木製雑貨づくりに繋がりました。家づくりの際にどうしても出てしまう端材を使い、身に纏ったり、飾ったりできる雑貨をつくり、販売しはじめたのです。

「藏堂」でつくっている蝶ネクタイ

そんな居藏さんのお住まいは、もちろん自ら手がけた木のお家。ご自身にとって一番落ち着く場所だといいます。またご自宅は、自分の好きなものを家族に共有するための場所でもあるのだそう。「自分は仕事でずっと木に触れられるけど、家族にもずっと木の心地よさを感じていて欲しい。見たときに『かわいい』『好き!』と思える空間や物を人に共有したいという気持ちが自然と沸いてくるんですよ」。お仕事でも、私生活でも変わりなく、「木の良さを知って欲しい」という気持ちを行動にうつしてきた居藏さん。そこには木そのものと、それに関わるひとたちへの愛情がたくさんこもっているように感じます。

そのイメージを「いつか」叶える

計画的・戦略的にでなく、感覚的に。居藏さんはこれまでのいき方を「ずっと自分にとってナチュラルな動きをしてきた」と振り返ります。実は「いつか起業するんだ」という思いは木の家づくりに出会う前からずっとあたためていたそうです。そして、工務店として独立するなら「藏家」。その名前は修行中から決めており、ロゴを考えるなどイメージを膨らませていたのだとか。そんな居藏さんがこれから挑戦してみたい夢は、飲食店を開くこと。「自然素材を扱う工務店が手がけた心地よい空間で、自然素材のご飯を食べられるお店。自分がそこでご飯を食べたいなあとイメージできるから、実現して他の人にも共有したい。これも、店名だけは決まってるんですよ(笑)」。

作業場の敷地内にも、木の心地よさに触れられる小さな空間が

「藏家」の創業から15年が経ち、仲間が増えていくなかで、居藏さんは自分の頭の中にあるやってみたいことや、なりたい姿をビジョンとしてスタッフに共有してきたといいます。そして「いつか」と誓ってきたその中のひとつが、今回お邪魔した作業場の完成でした。国産の天然木で組み立てられた木造トラス構造の作業場は、「工場」のイメージを覆す佇まい。三角形を基本単位として部材を組み合わせるトラス構造は、柱を必要とせず、ドーム型の広い空間をつくることができますが、その工程は複雑で施工が難しいとされています。

こちらが木造トラス構造の作業場の天井

しかし「国産材にこだわってものづくりをする自分たちに一番似合う作業場を」という想いで、自社の施工で挑戦。完成の際にはお披露目会をひらき、関係者やお客様、友人など約200人もの方が集まったそうです。そのパーティーでは、なんと友安製作所のビニールカーテンがこんなおしゃれな使い方をされていました!こちらは、デザイナー・小泉誠さんのデザインで製作された木製の屋台。その屋根に偶然採用されたのが友安製作所のビニールカーテンでした。私たちも居藏さんも、後から知ってびっくり。サイズオーダーのビニールカーテンを活用した素敵なアイデアに、私たちもわくわくさせられました。

作業場のお披露目会

居藏さんから伝わってくる、とても純度の高い「好き」や「やってみたい」の気持ち。それはまさに自分らしく人生を楽しむ種であるように感じます。それを自分のペースで育て上げてきた居藏さんがこれからはどんなものを生み出すのか。いつまでも目が離せません。