【おいしい物語 vol.2】農家の想いを、ひと皿に込めて。友安製作所カフェと「届ける八百屋」がつなぐ、おいしいバトン

友安製作所カフェの「おいしい」をつくっているのは、私たちだけではありません。その裏側には、心を込めた食材でメニューをともに彩ってくれているパートナーがいます。食のプロフェッショナルたちが支えてくれているからこそ、私たちはとっておきのひと皿をお届けできているのです。

カフェのメニューを「食材」という立場から支えてくれているつくり手を訪ねる、連載企画。つくり手が食材に込めた想いや、カフェのひと皿の背景にあるストーリーを、みなさまにお届けしていきます。
第2回目は、「Factory Cafe CO-BA」のオーガニック野菜仕入れ先としてお世話になっている、「80831 ヤオヤサイ」のオーナー・藤原さんにお話を伺いました。

カラダがよろこぶ、オーガニック野菜が主役のカフェ

「colorsサラダプレート」(1,700円〜)

オーガニックカフェ「Factory Cafe CO-BA」で一番注目を浴びているのが、農薬をできるだけ使わずに、地元の八尾市や、大阪府内で大切に育てられたお野菜や果物たちです。“カラダがよろこぶ”をコンセプトに、みずみずしいお野菜をふんだんに取り入れたお料理を、さまざまな形でお届けしています。

そのCO-BAの主役ともいえるお野菜を届けてくれているのが、「ヤオヤサイ」の藤原さん。カフェの定番メニューに欠かせないものから、その季節ならではの貴重なものまで。定期的に届く野菜リストから、CO-BAの店長であるChelsea(チェルシー)が一つひとつ丁寧に厳選しています。

きっかけはいちじく畑。子ども時代から芽生えた、農業への想い

「大阪にはおいしい農作物がたくさんあるし、ユニークな農家さんもいっぱいいらっしゃるんです。でも、その魅力がまだまだ伝えきれていないな、ともどかしく感じていました」。

“地産地消×オーガニック”をコンセプトに、化学合成農薬や化学肥料に頼らずに育てられた農産物を農家さんから直接受け取り、宅配やマルシェで販売している「ヤオヤサイ」の藤原さん。実はもともと、大阪府の職員(普及指導員)として、17年もの長い間、農家さんを支えるお仕事をされてきました。土づくりから肥料の使い方、病害虫の対策までを知り尽くした、国家資格の持ち主です。

農業への熱い想いは、子どものころからでした。
「実家は農家ではなかったのですが、小学生の夏休み、父と歩く早朝の散歩道にいちじく畑がたくさんあったんです。農家さんが小屋で出荷作業をしている風景が今も心に残っていて。そこで買ったいちじくを帰ってから頬張ると、本当においしくて……。でも、自分が大きくなるにつれて、その畑がどんどん潰れてしまいました。『あんなにおいしいのになぜだろう?』と疑問に思ったことが、農業との出会いでした」と、藤原さんは振り返ります。

その疑問の答えを探すように、大学では農学部に進み、都市農業の仕組みを学びました。その中で、農家さんに直接栽培や経営のアドバイスを行う「普及指導員」という行政の仕事に出会います。自らが畑を耕すのではなく、頑張る農家さんをサポートする仕事に惹かれた藤原さんは、大阪府に技術職として入庁。八尾の事務所への配属を皮切りに、長きにわたって農業の生産性を上げる「農業振興」や、新しく農業を始める人たちをサポートする「新規就農支援」に力を注ぎました。

農家の伴走者へ。公務員から「届ける八百屋」という道の転身

普及指導員として農家さんに寄り添い続けていた藤原さんですが、情熱を持てば持つほど、もどかしい壁にぶつかることもあったといいます。
「新しく農業を始めたいという方の中には、農薬や化学肥料を使わずに、本当に身体に良くておいしいものを育てたいという熱い想いを持った方がたくさんいらっしゃいます。でも、その手塩にかけたお野菜を、見合った価格で届けられる場所が少なかったんです」。
消費者が多い大阪では、大きな直売所などにお野菜を並べるルートが多いですが、そこには別で仕事をしながら少しの規模で楽しんでつくられている方のお野菜も安く並んでいます。手間暇をかけた無農薬のお野菜が、価格だけで比べられてしまうのはとても苦しいことでした。

また、農業を始めたばかりの方にとって、土に触れてお野菜を育てるだけでも大仕事なのに、それをひとつずつ袋に詰めて、車で運び、さらにはお店へ営業にも行く……といった作業をすべて一人でこなすのは、時間的にも本当に大変なこと。
「待ってくれているお客様はたくさんいらっしゃるのに、この販売と時間という壁をどうにかしないと、農家さんが笑顔で農業を続けていくのは難しい」と藤原さんは強く感じていました。けれど、公務員という立場では、どうしても「公平であること」が求められます。特定の農家さんのためだけに販売ルートを開拓してあげることには、限界がありました。さらに定期的な異動もあるため、同じ地域でひとりの農家さんに一生涯寄り添い、サポートし続けることはできなかったのです。

「農家さんの一番の味方になってサポートし、農業というお仕事を未来へつなぐためには、この地域にしっかりと根を張り、一緒に伴走する人間が必要だ」。その想いを胸に、藤原さんは17年間紡いできた公務員としてのキャリアに区切りをつけます。農業をサポートする企業での転職経験を経て、ついにご自身で独立。お店を構えて待つのではなく、農家さんから預かったお野菜を車に乗せ、必要としてくれる人のもとへ直接お届けする。そんな宅配・移動販売というスタイルの「ヤオヤサイ」を立ち上げました。

ちなみに、ヤオヤサイが展開するサービスブランドの名前は「どっこいしょ」といいます。この名前には、いい食べ物はいい土からの「ど」、流行りに流されず「地に足をつけてやっていく」という強い決意を表した「どっこい」、子育て世代にも親しんでほしいという願いが込められています。

自ら農家さんの畑へ足を運び、作物の状態を見守る藤原さん。お天気に左右される農業のリアルに寄り添い、「20袋の注文でも、今日は18袋しか採れなかったならそれで大丈夫ですよ」と、ふんわりと受け止める姿勢は藤原さんならでは。
逆に豊作でたくさん採れすぎたときには、CO-BAなどの飲食店に「こんなにおいしいお野菜がいっぱい採れたんですが、どうですか?」と声をかけ、農家さんの困りごとを笑顔に変える橋渡しをしてくれています。

野菜の魅力を、ひと皿の料理へ。バトンを受け継ぐCO-BAのキッチン

そんな農家さんの想いと、藤原さんの情熱を受け取るのが、CO-BAの店長・Chelseaです。毎週、藤原さんから届く「今週の野菜リスト」を眺める時間は、お店づくりの大切な時間になっています。

「スーパーでは見かけないようなスイスチャードやエンダイブといった珍しい葉物はもちろん、『ナスだけでもこんなに色や種類があるんだ!』と、リストを見るだけでワクワクします。藤原さんが『これ、こうやって調理するとおいしいよ』と教えてくれることもあり、どうやってこの野菜の魅力を最大限に活かそうかなと、新しいメニューのヒントになることも多いんですよ」とChelsea。

藤原さんから届くお野菜はどれも彩り豊かで、お皿にのせるだけでも、楽しいひと皿に仕上がります。「生で食べられるお野菜は、そのみずみずしいおいしさをそのまま味わってほしい」というChelseaの想いから、ワンプレートのお料理にも、たっぷりのサラダとして添えられています。

「たとえば『冬にこんなお料理をつくりたいから、こういう味の野菜がほしい』とざっくりとしたイメージを伝えてもらえれば、農家さんに相談して、半年先の種まきの時期から準備をすることもできるんですよ」と藤原さん。
農家さんと深い絆で結ばれている藤原さんだからこそできる素敵な提案に、Chelseaも目を輝かせていました。そんな夢のような連携ができたらと、胸が高鳴ります。

そして何より、2人の想いがぴたりと重なったのは、カラダへの優しさはもちろんのこと、とにかく「おいしい」と心から思えることが、ヤオヤサイのお野菜の最大の魅力だということでした。
「農家さんが愛情たっぷり育てた、とびきりおいしくて美しい素材」を、「カフェのカラダがよろこぶひと皿」へと変えていく──プロとしてのふたつの想いが重なり、愛情のバトンが受け継がれることで、CO-BAのメニューは次々と生まれています。

CO-BAオープン1周年に向けて。それぞれが描く、未来の景色

お話を伺っている間も、藤原さんから飛び出す珍しいお野菜や今の時期におすすめのお野菜の話に、すっかり釘付けになるChelsea。この日は、イタリアンで使われる「花ズッキーニ」や、まるでフルーツのように甘いという「生のスイートコーン」のお話に花が咲きました。6月に迎えるCO-BA1周年パーティーに向けて、特別なお野菜たちをどうやってお料理にしようか、2人のアイデアは尽きません。

「うちのスイートコーンは、生でかじると柿のように甘いんです。でも、無農薬で育てるとどうしても虫に狙われやすくて、大阪の暑い夏を乗り越えるのは農家さんも本当に大変なんですよ」と、農家さんの苦労を代弁する藤原さん。
その背景にある物語を知っているからこそ、Chelseaも「旬のおいしさと農家さんの努力が詰まったスイートコーンを、1周年のプレートにのせられたら、きっとお客様も喜んでくれそう!」と笑顔を見せます。農家さんが置かれている状況や、お野菜を扱う上で知っておいてほしいこと。そういった背景は、メールなどの文字だけではなかなか伝わりきりません。だからこそ、直接自分たちの言葉にのせて、お客様へ手渡すことを、藤原さんは大切にしています。

「CO-BAがオープンしてからこの一年、あっという間でしたね。お野菜を届けに来たとき、お食事が終わって帰られるお客様のお顔が見えることがあるんです。みなさん、すごくいい表情をされていて。心の中で『それ、うちが届けたお野菜なんですよ』って、ドヤ顔しています(笑)」と藤原さん。Chelseaも「お料理をお客様に出すとき、『これは農家さんが大切に育ててくれた、特別なお野菜なんですよ』とお伝えすると、感動したようなお顔を見せてくださるんです」と、嬉しそうに語ってくれました。

大阪の地で頑張る農家さんとともに、泥くさく、けれどあたたかく伴走し続ける藤原さん。お野菜を届けることを通じて、大阪の農業の素晴らしい価値をたくさんの人に知ってもらいたいと願っています。その藤原さんが届けてくれるお野菜のパワーをお借りして、CO-BAではこれからも、誰もが笑顔になれるおいしいお料理をつくっていきます。

CO-BA1周年は、まだまだ通過点。ここ八尾から、これからもたくさんの人に笑顔をお届けできるように、想いのこもったひと皿を丁寧につくり続けていきます。

編集後記

藤原さんとChelsea2人のあたたかなお話を通じて、食の豊かさを改めて感じることができました。
農家さんからの大切なバトンを受け取る藤原さんの、「手間暇かけて育てられた、お野菜の本当のおいしさを知ってほしい」という願い。そして、そのお野菜をキッチンで預かるChelseaの、「おいしくてカラダに優しいごはんを食べて、ほっこり幸せな気持ちで帰ってほしい」という想い。

立場は少し違っても、食の価値を伝えたい、誰かを笑顔にしたいという向かう先は同じです。それぞれのあたたかい心が一本のバトンとなってつながり、CO-BAのテーブルの上で、「お客様の心をほぐす最高のひと皿になりますように」と願いを込めて。ヤオヤサイのお野菜をたっぷり使ってつくられたCO-BAのお料理を、ぜひお店で食べに来てくださいね。

profile

80831 ヤオヤサイ 藤原 亮介さん

大阪府の普及指導員としての経験を活かし、自ら畑に足を運んで仕入れた厳選野菜を、サービスブランド「どっこいしょ」を通じて宅配・移動販売でお届けしている。マルシェなどのイベントにも不定期で参加するほか、直近では災害時の野菜不足を解決するため、あたためずに食べられる野菜料理の缶詰を開発。農業者の想いを消費者へつなぐ活動を、あらゆる形で発信し続けている。
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