【工務店施工事例】尼崎の歴史を紡ぎ、新しいアイデアが生まれる場所へ

友安製作所が取り扱うアイテムを取り入れながら、リノベーションプランを提案する友安製作所工務店。本シリーズでは、施工をご依頼いただいたお客様に、リノベーションを行ったきっかけや施工中の印象的なエピソード、友安製作所工務店を利用してみた率直な感想などを、Ttimes編集部がじっくり伺います。今回訪ねたのは、2026年4月に尼崎市に開設した「オープンイノベーション拠点 ARKade(アーケード)です。かつて信用金庫として親しまれていた場所が、地域の企業や起業家、クリエイターなどが集うコワーキング&イノベーション拠点へと生まれ変わりました。

信用金庫時代の歴史ある面影を大切に残しつつ、モダンで心地よい空間をどのようにつくり上げていったのでしょうか。
今回は特別企画として、尼崎信用金庫の井上さん、尼崎市の杉下さんと、そして開設後もARKadeに通いながら事業者支援に伴走する友安製作所(工務店事業課・まちづくり課役員)のWill(ウィル)、まちづくり課のKiki(キキ)の4名に、和やかな対談形式でお話を伺いました。

左からWill(ウィル)、尼崎信用金庫 井上さん、尼崎市 杉下さん、Kiki(キキ)

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金融機関の趣をそのままに。歴史を受け継ぐリノベーション

──ARKadeのオープン、本当におめでとうございます! そもそも、この場所を開設することになったきっかけから教えていただけますか?

杉下さん 尼崎といえば、昔から「ものづくりのまち」として発展してきた歴史があります。その強みをさらに育てていくためには何が必要か、尼崎信用金庫や商工会議所のみなさんと2022年ごろから検討していたんです。その中で見えてきたのが、「イノベーション」の必要性でした。特に、組織外部にある技術やアイデアを自社に取り入れる「オープンイノベーション」が必要だと考えました。そこから具体的な取り組みを考えていく中で、「地域の企業や起業家、クリエイターなど、みんなが集まれるイノベーション拠点をつくろう」というアイデアが生まれ、そこから約3年をかけて開設を実現しました。

尼崎市・杉下さん

──そのイノベーション拠点を、なぜこの場所に決めたのでしょうか?

井上さん ちょうど拠点づくりのお話が進んでいたころです。2020年11月に閉鎖した当金庫の旧中央支店が商店街の中にあり、そこは多くの方が目の前を通る場所でもあるので、当金庫の理事長から「ここを活用してみては?」とご提案させていただきました。

尼崎信用金庫・井上さん

杉下さん 「イノベーションの拠点にするなら」と快くご提案いただきましたよね!

井上さん 私たちとしても、長年親しまれた旧中央支店をどう活かそうか模索していたタイミングだったんです。尼崎市さんや商工会議所さんなど支援機関のみなさんと「ここで新しいイノベーションをどんどん起こしていこう」と議論している間に、「やっぱりこの場所がぴったりだね」と自然にまとまっていきました。

Will 一緒にお話しする中で、尼崎市のみなさんと、まちに関わる方々の熱い想いがどんどんひとつになっていくのを感じていました。尼崎市の方々は、企業や市民の方々との距離がとっても近くて。そのあたたかくて強い絆があったからこそ、この場所でのオープンが叶ったんだと思います。

Kiki 普段からのコミュニケーションがしっかりあるからこそ、「尼崎をもっと盛り上げたい!」という一体感が生まれているんでしょうね。

──なるほど。そんな素敵なご縁があったのですね。今回、リノベーションを友安製作所工務店にお任せいただいたのには、どんな背景があったのでしょうか?

杉下さん 実は、ARKade立ち上げの中心メンバーだった尼崎市職員と私の2名は、公務員時代のWillと同僚だった時期があり、よく知る間柄でした。そこから、「みせるばやお」などのコミュニティ拠点をつくり上げてきたWillに、「尼崎にも拠点をつくりたい」と、施設のコンセプトのつくり方や運営のコツなどを相談に乗ってもらっていたんです。その中で、友安製作所さんのまちづくりや工務店事業のお話を伺い、自然な流れでリノベーションの相談も尼崎信用金庫さんを交えて進んでいきました。

Will 古くからの友人が、ちょうど尼崎市のイノベーション推進担当だったんです。こうして空間づくりからその後の運営まで、伴走させていただけるのは本当に光栄なことです。

工務店事業課、まちづくり課をまとめるWill

──もとは信用金庫だったこの場所をリノベーションするにあたり、こだわったポイントや「ここは残したい」と思ったところはありますか?

井上さん 実は、Willから「金融機関だった面影を、あえて残しましょう」と提案いただいたんです。代表的なものが、1階の「金庫室」ですね。ずっしりと重たいシルバーの扉は、やっぱり金融機関の金庫室ならではの独特のオーラがありますから。

かつて金庫室だったお部屋の扉を活かしています

杉下さん 今はその扉を開放して、ミーティングルームやコワーキングスペースとして自由に使えるようにしています。初めてARKadeにいらっしゃった方が、必ずと言っていいほど驚いてくれる、シンボル的なスポットになっていますね。

もとは金庫室だったミーティングルーム。中もあえて鉄格子を残したデザインに
腰掛けスペースの左側の階段を登ってさらに奥には、第二のミーティングルーム

井上さん かつて信用金庫だったこの場所に、こうして新しい歴史が刻まれていく様子が一目で伝わるのは、すごくおもしろいなと感じています。

杉下さん 2階にあるミーティングルームも、もともとは書庫室だったんですよね。会議がしやすいように中はすっかり生まれ変わっていますが、入口の重厚な扉はそのまま残しました。ここでも、信用金庫時代の面影を感じていただけると思います。

イベントスペースなどを行う2階のホール。左手前には書庫室の面影を残す扉のミーティングルームが
中の様子はこちら。出入口から通路を挟んで左側には第三のミーティングルーム
通路を挟んで右側は第四のミーティングルーム

Will 一般的な金融機関だと、大切な書類を保管する書庫室が2階にあるのは結構珍しいことなんです。「このつくりにはきっと何か意味があるはずだ」と感じて、初めて視察に伺ったとき「この景色は絶対に活かしたい!」と確信しました。残したいポイントに、片っ端から付箋を貼っていきましたね(笑)。

井上さん 最初、「金融機関らしさを残す」というアイデアには少し半信半疑なところもありました。でも、一般の方からすると金融機関の金庫室に入る機会なんてめったにないから、みなさん興味津々で見てくださるんですよね。今では「ここは元々、中央支店だったんですよ」とご案内するのが、お越しいただいた方とのコミュニケーションのきっかけになっています。

Kiki 金庫室での打ち合わせって、ちょっとした非日常感があってワクワクしますよね。私も週に1回通う予定だったので、この内装コンセプトを聞いたときから完成を心待ちにしていました。

尼崎市のまちづくりを担当するKiki

残すだけじゃない。新しいアイデアを吹き込む唯一無二の空間へ

──歴史を大切に残すリノベーション、本当に素敵ですね。他にも活かされている場所はあるのでしょうか?

井上さん 2階の奥に、元々は女性用更衣室として使われていた「畳の部屋」があったんです。そこも「ひとつくらい、くつろげる場所があっても良いのではないか」とご提案いただいて、ミーティング兼リラックススペースに生まれ変わりました。

ARKade唯一の和室。これからはこのスペースをたくさん活用していきたいそう

杉下さん 和と洋がミックスされた、おしゃれでモダンな空間になりましたよね。先日、中央出張所で働いていたOGの方が来られて、この和室を見て「懐かしい!」と喜んでおられたとか。

井上さん そうなんです。ここは当金庫の中でも11番目に古い歴史ある支店だったので、思い入れのある職員も多くて。生まれ変わった姿を見て感動してもらえるのは、私たちにとってもすごくうれしい出来事でした。

Will もちろん、ただ古いものを残すだけでは新たな価値は生まれません。そこに加えて、“今っぽさ”や新しいアイデアを掛け合わせることを大切にしたいと思い、和室も「ひとりで塗れるもん」の「トミーブルー」というアクセントカラーを取り入れてモダンな雰囲気に仕上げました。

また、尼崎市さんからは当初「コテコテの尼崎っぽさは消してほしい」なんてご要望もありましたよね(笑)。でも僕は、尼崎ならではの個性は絶対に活かすべきだとお伝えしたんです。ただ、例えば地元のスポーツチームを連想させるような原色をたくさん使って目立たせるのではなく、工業都市としてのルーツを、洗練されたモダンスタイルへと昇華させることを目指しました。

──「今っぽさ」は、具体的にどのようにデザインへ落とし込んでいったのですか?

Will 例えば、尼崎市は工場が充実している地域なので、ミーティングルームの一部など、随所に工場を連想させる「角板」を壁面に採用しました。また、尼崎市のロゴマークである5色の花びらをモチーフにして、各ミーティングルームの壁色をそれぞれ違うカラーにしているんです。パッと目を引く色合いでありながら、空間に馴染みやすい絶妙なトーンを選びました。

2階にある第五のミーティングルーム。グリーンの壁が存在感を主張しすぎずスタイリッシュです

杉下さん 決して派手すぎず、空間の心地よいアクセントになっていますよね。ミーティングルームだけでなく、1階のブース席もすべて壁の色が違っていて、それぞれに違った良さがあります。

Will ブース席は何もないゼロの状態からつくり上げました。にぎやかなホールの中でも集中できる、対面・オンライン両対応のワークスペースです。上部の壁と「壁用フェイクグリーン グリーンウォール Euphoria・ユーフォリア」、そして職人がイチから製造して設置した建具のバランスを調整するのは「職人泣かせ」だったかもしれませんが(笑)、その分、本当に最高の仕上がりになりました。みんなにぜひ見ていただきたいポイントですね。

壁色カラーの頭文字を表記し、ブース席の名前にもなった「B」「G」「Y」「R」のサインボードは、「アイアンブラケットサインボード tsuri」を使用

井上さん 1階のレンガ調の壁も、尼崎が工業都市として発展してきた原点である「尼崎紡績」をイメージしてデザインしてくださったんですよね。「どんな場所なんだろう?」と、ふらっと立ち寄りたくなるような、素敵な空間になりました。

本物ような仕上がりのレンガ調の壁面

Kiki デザインが素敵なのはもちろん、それぞれのスペースが本当に使いやすく考えられています。私は一人で集中したいとき、よく掘りごたつ式のコワーキングスペースで作業しています。靴を脱いで作業できるので、足元がリラックスしてすごく心地いいんですよ。植物が好きなので、目の前に広がるフェイクグリーンの癒し空間も、個人的に推しポイントです。

掘りごたつ式のコワーキングスペース。目の前には涼しげなフェイクグリーンをあしらっています
右隣には、カウンターを高めに設定したコワーキングスペースも

──内装デザインだけでなく、インテリアのコーディネートも工夫されているんですよね?

Will そうですね。例えば、1階で使用しているディスプレイ台は、空間を象徴する特徴的なアイテムの一つです。工場や倉庫でよく使われる木製パレットを、ここでは什器として活用する提案をさせていただきました。今は他にも活用方法はないか、みんなで検討しています!

左が木製パレットの什器

杉下さん インダストリアルなデザインの椅子をたくさん取り入れてくださったのも、さりげない工夫ですよね。ここも工場の無骨な雰囲気を参考にしてくださったのだと思いますが、ARKadeの空間にしっくり馴染んでいます。

井上さん あとは何といっても、1階にある木製の曲線テーブルですね! 波打つような形のテーブルは単体でも使えますし、組み合わせればS字になったり、大きな円形になったりと優れものなんです。

杉下さん 用途に合わせて形を変えられる柔軟性が素晴らしいですよね。デザインとしても目を引きますし、サイズ感もちょうど良くて、僕もよくこのテーブルで作業をさせてもらっています。

──空間のすべてが、コミュニティを育む仕掛けになっているんですね。今回、友安製作所工務店に拠点づくりを依頼されていかがでしたか?

杉下さん 友安製作所工務店のみなさんは、我々以上に尼崎市のポテンシャルを理解して、魅力や存在価値を空間デザインに落とし込んでくれました。プロとしての熱い想いを持って伴走してくださったことに、心から感謝しています。

井上さん 「なんとなくおしゃれだから」ではなく、内装の一部分やインテリアの一つひとつに、きちんとした意味が込められているんですよね。何を質問してもプロの視点でわかりやすく説明してくださるので、とても心強かったです。

Will 細かなこだわりを形にしてくれた空間デザイナーや職人など、施工チームのみんなが力を尽くしてくれたからこそ完成した拠点です。これからはハード面(工務店)からソフト面(まちづくり課)へとバトンをタッチして、事業者さんたちの支援活動を全力でバックアップしていきますね。

Kiki 私たちも工務店チームの熱い想いを受け継いで、ARKadeに集まるみなさんの挑戦に力強く寄り添っていきます! これからもどうぞよろしくお願いします。

姿を変え、想いを継ぎ、進化し続ける場所へ

終始、和気あいあいとした雰囲気で進んだ対談。中でも特に印象的だったのは、最初は「金庫の扉を残す」というアイデアに少し戸惑いを見せていた尼崎信用金庫の井上さんが、今ではその場所をとても誇らしげに語ってくださったことでした。
それは、友安製作所工務店が「なぜそれを残すのか」という本質的な意味をしっかりと伝え、信用金庫の歴史と尼崎らしさ、そして現代的なデザインを調和させたことで、みなさんの心に深い共感が生まれたからです。

「空間づくりのすべてに意味がある」。
誰もがのびのびと挑戦し、ふと新しいアイデアの種を蒔きたくなるような、たくさんのこだわり。かつての中央出張所は、大切にされてきた面影と歴史を紡ぎながら、新しい姿へと進化を遂げました。この場所はこれからも、ものづくりのまち・尼崎の発信拠点として、集う人々とともに成長し続けていくはずです。

オープンイノベーション拠点 ARKade

オープンイノベーションコア尼崎運営協議会(OIC)によるワンストップの無料相談対応、事業の共創やイノベーションを促す交流会、ワークショップなどのイベント・プログラム、コワーキングスペースやミーティングルームなど、挑戦する人々や企業のアイデアを形にするための複合施設。

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